東京都│葛飾区立石の呑んべ横丁
ナントモゆるいレポートだけれど我慢して欲しい、本日は酒好きにも写真好きにも有名な葛飾区は立石の「呑んべ横丁」をご紹介したいと思う。場所は京成線立石駅から直ぐと言う立地、2010年までは急行列車も止まる駅だったが現在は各駅停車の普通列車が止まるのみと成った下町ローカルな駅。周辺地域は風情溢れる店構えの古めかしい商いが並び、夜には地元客がふらりと寄れる呑み屋街の行灯が燈る。
昭和の匂いが未だ漂うこの「呑んべ横丁」を再開発問題と絡めてレポートしてみます。
この「呑んべ横丁」を語る上でどうしても外せないのが京成線立石駅とその周辺地域の再開発問題だ、立石駅を連ねる京成電鉄押上線は京成本線、北総線、都営浅草線、それぞれ直通列車が走る事でも知られている。よってラッシュ時にはそれぞれの利用客がこの押上線沿線駅に集まり、元々下町開発だった昭和期から離脱出来ない住民の保守的な地元意識も相まって近代開発からは数歩下がった立ち位置だった。
立石駅も然り、朝夕は開かずの踏切として交通の不便を余儀なくされ、複雑なダイヤ改正に取り残されて現在は各駅停車の普通列車が止まるのみと成った。それでいて京成線の全69駅の中では1日平均乗降人員が上位となる10位、なかなかにしてアンバランスな存在と成っている。
この様に駅としても周辺の交通の利便性としても、また兼ねてから取り残されていた都市開発の一環としてもこの立石駅周辺の再開発は何れ免れない状況だった事は誰の目にも明らかだった事だろう。
そして現在、「京成押上線連続立体交差事業」と言う名の下に駅と道路をアンダーパスで立体化して交通渋滞を無くす計画が進められている。この計画の中には地域の活性化事業も含まれる様で安全基準を満たしていない古い建築物や消防法で特別措置を受けている長期間営業されている商店などを一貫して再開発に盛り込んで刷新しようと行政が動いている、そして今回の「呑んべ横丁」だ。
葛飾区役所では凡そ30年前より再開発の話が出ていて最近に成って土地買収が済んだ場所からセットバック工事が行われている、南側の仲見世商店街も計画事項に含まれてはいないものの再開発の恩恵を受けようと地元主導の事業計画が進められているそうだ。
実際に最近では下北沢(緊急対策踏切リスト掲載案件)が同様の理由で立体交差工事が完了し、2013年3月23日からは駅舎が地下化されている。
ともすれば。
この風情溢れる「呑んべ横丁」の姿も時機に見られなく成るだろう事は明白、近年テレビや映画、出版物で何かと名前を目にする事が多い「立石」ブームなるものも開発の波にのみ込まれるのは寂しい事です。
それでは北側の雄、「呑んべ横丁」を歩いて見ましょうか。
閑散としていますがアチコチからお客さんの笑い声や話し声が聞こえます、それなりに賑わってはいる様です。それにしても凄い、何が凄いってこの作り。古めかしい素敵な雰囲気とも言えますが何より建造物の老朽化が、うん。
再開発の計画書には「京成押上線連続立体交差事業」がメインに据えられていますが事細かに読み進めると防災街区整備地区計画、密集住宅市街地区整備促進事業なども組み込まれています。東京都が定める建物倒壊危険度ではどうどうの「危険度5」、都内5073町丁目中で32番目の危険度と認定されているのも頷ける様相です。
1954年からスタートしたこの一角の歴史、付近には町工場が軒を連ねていた為に当初の雑多な商店区画から呑み屋街へと変貌するのだけれど当時の「立石デパート商会」としての残留物も多く、服飾、糸、飲食物の店が存在した事を感じる事も出来る。
駅周辺の商店は当初屋根を持たない闇市場的な個人商が発祥とされていて戦後の混乱期に盛況だったとも記録に残っている、また「立石駅北口交番の裏が風俗街」だった事とも古くから住む人達には知られていてるそう。売春防止法が施行される1956年~売春廃止法が施行される1958年の流れまでは娼婦達が練り歩く姿も見掛けたとか。
少し路地を歩くと成る程、これは昭和臭が濃霧の如く漂う雰囲気では在りませぬか。地域行政や地元商工会の方でも建物倒壊危険度の問題は十分に把握していて再開発を進めて行きたいと考えている…の、だけれど。それでもこの情景は残して欲しいとも思う、それは不意に訪れた方や地元の方も含めて「懐かしい」と思える情緒的な場所が少なくなっているからだろう。
昼間でも陽の差す所が少ない薄暗い「呑んべ横丁」、夜に成ればこの通り廃な「画」が撮り放題に。
さてさて、如何でしたでしょうか。近い将来消えてしまう事が決まっているこの「立石」の呑み屋街に少しは興味が沸きました?常連客ばかりで初めての入店には気後れするお店が多いですが是非とも知らないおっちゃん連中と仲良く酒を酌み交わしてみて欲しいと思います、以外と若い人にも気さくに話しかけてくれますよ。
そうそう、こんな企画も定期的に行われています。
立石のスナック街「呑んべ横丁」巡るツアー開催
http://katsushika.keizai.biz/headline/785/
因みに地名の「立石」ですが葛飾区の公式サイトの記載によると「この地に”立石様”と称する奇石から起こった地名で、すでに室町時代の古文書にその地名が記載されています」との事。随分と古くから地名が残っているんですねぇ。
アプローチ
京成電鉄押上線立石駅下車直ぐ、ホントに直ぐ解ります。
地図リンク
http://yahoo.jp/gRt1Uw
photograph - nee