埼玉県 │ 狩倉岳 石舟沢鍾乳洞
滅びの美学 [ 廃墟・廃屋・遺跡・廃村・廃道 ] 探索 - 狩倉岳 石舟沢鍾乳洞
やって来ました、やっとこでやって来ましたよ石舟さん。前回土砂没で入洞出来なかった石舟沢鍾乳洞、その後に入林許可などを取って石舟沢とケイブの美しさを再確認して来ました、リベンジケイビング「狩倉岳石舟沢鍾乳洞」のレポートを皆様にお届けしたいと思います。
おおっと、その前に前回も記載した注意点を。
この場所、勿論一般入洞は出来ない、入洞するには入洞届けと県有林内の入林届けを提出して許可が降りてからとなる。基本的にケイビングの経験が無い者には許可が降りづらく、ケイビング団体単位での認可と成る。
なので有名では在るけれど地図リンクは無い事を予め了承願いたい、と言うか今後ケイビング関連のエントリーは地図リンクは記載しないのでどうしても行ってみたい方は既述の通りケイビング団体に所属するか体験ケイビングに申し込んだ上で行って欲しい。
と、こんなくだりを前回の訪問レポート冒頭で書いた。
しかし現在はこの鍾乳洞を擁する石舟沢は入林も入洞も許可されていない。入洞自体はPCC(パイオニアケイビングクラブ)、そして山間部は秩父市(秩父農林振興センター林業部)が管理していた。
奥秩父の洞穴の入洞規制について - パイオニアケイビングクラブ
http://www.verte.co.jp/pcc/txt/news/kenyurin.htm
しかし2012年の登山事故によって入山環境は一変する。
秩父市埼玉県の県有林内鍾乳洞立入禁止 - 東西トレック
http://www.tozai-trek.com/ja/2012/07/chichibu-caves-off-limits/
県営林からのお知らせ - 埼玉県
http://www.pref.saitama.lg.jp/site/ringyo/keneirin.html
この事故によって中津川周辺の県有林内の鍾乳洞への入洞を全面的に禁止。対象洞穴には石舟沢鍾乳洞、仏石山鍾乳洞、藤十郎沢鍾乳洞を含む林道も入林禁止に。ケイビング初心者や登山と言うスポーツを理解していない登山者によって素敵な自然環境を楽しむ機会が減ってしまったと言う訳だ、本当に残念で成らない。
ケイビングは元よりクライミングなどの一般的ではない登山は山岳会の入会、登山保険、装備や知識、そして経験が必ず必要に成って来る。これらを端折ると事故や自然災害に見舞われた時に大怪我や最悪死亡事故、それらに伴いう保証関係の金銭面で痛い目に合う。なのでもしクライミングやケイビングに興味が沸いたなら是非とも必要な装備や知識を用意して挑んで欲しい、美しい自然と向き合う最低限の準備を行った上で楽しんで欲しいスポーツだと解って頂ければ幸いだ。
今回もワタクシが沢と山の知識を担当し、相棒がボルダリングと生岩の実践経験を担当。同行の初心者2名をサポートしながらの訪問と成った、装備もいつもの登山より多め。スポーツケイバーは全国でも2000人程と少ないジャンルだ、今後ケイビング人口が増えて欲しいと思うとても楽しいスポーツだけれども「危険」が隣合わせだと心掛けて欲しいハイリスクな面を理解した上で今回のレポートを読んで頂ければ、そう思います。
冒頭から堅苦しく成って本当申し訳ない、それではレポート開始です。
石舟沢の登山道入口は現在廃道の途中に御座いまして、なので車のデポ地で準備を整えて出発します。今回の参加人数は全部で4名、実はこの4人は2012年のメインレポートだった房総の秘瀑「間滝」のメンバーでも在りました。
後にあの滝を越る仲間達だ、今回だって美味しく頂こうじゃありませんか。いくぞーっ。
石舟沢の登山口、ココから暫く辛い登りが続くのです。
前回間違えたトウタロウ沢と石舟沢の分岐、今回はスンナリ。
中盤見所の石舟沢の大ガレ場、殆どがガチ場なので遡行に問題は無い。
そうそう、今回はロープを2種類用意した。簡単な場所や練習用に良く使用するナイロンやPPのスリースランド(クロスも偶に使用)、これは水にも強いし何より軽い事が嬉しい。
んでクライミングで常用するのがカーンマントルロープ、まあザイルです。ラペリングやリペリング、山岳救助でも使用されています。
他にもストランドやダブルブレイドも有名ですが今回は紹介した2種類を選択しました。
石舟沢鍾乳洞の洞口に到着、気温は外気温で20℃程だったけれど約1時間の登山で随分と暑く感じた。一方鍾乳洞の洞口からは10℃前後の冷たい風が、汗を乾かして体感温度の温度差を少なくする為に暫く休憩する事に。
おい弟子(2*歳♀)、トイレットペーパー持って何処へ行こうと言うのだ。貴様、まさかこの雄大な自然の中で…いや、そんな事はないか。しかし…。
「えーとですね、どちらに…その、えーと」
「琵琶湖は”川”なんですよ」
「へー、そうなんだ。勉強に成ります。ところで今から、どちr」
「特技はイオナズンです」
マジか。
彼女の足は止まらない。
「おい、その白くて薄い紙をロール状にした物を一体何の目的にt」
( ^ν^)「amazonで買った!」
え?
( ^ν^)「amazonで買ったっ!!」
いや、お前さっき高速のSAでパクってきt
無事洞口へ到着し、これと言ったトラブルも無く、実にスムーズに入洞を開始した我々だった。何も無かった、何事も無かった(2回目)、少なくとも記憶にはない(確認)。
そうそう、石舟沢鍾乳洞の洞口はとても狭い。500mm程の洞口で下へ潜る様に匍匐で前進、その後45度身体を屈伸させて体の幅ギリギリの狭い斜面をトラバースして移動する。実は最初のアプローチが結構な難関だったりします、何せ荷物や機材をバケツリレーで流す必要が在るので本当に面倒クサイのですわ。
※ この辺はクロサンショウウオが結構な数でモサモサしてるので気を着けて。
入洞して5分程でホールに出る、石舟沢に幾つかの大きなホールが在るのだけれどこのホールが一番大きい。ここから右奥へ上ルートと下ルートで分岐、と言っても着く所は同じなので比較的安全な下ルートを選択。
ケイビングは初体験の間滝メンバー、この美しいケイブホールで悠久の造形美を想うのだろう。
(´-`).。oO(今週のジャンプって合併号じゃん…)
そんなことはなかった。
更に進む、ココまでは複雑な分岐も無くてケイブ初心者2人をサポートしても問題無かった。予定ではそろそろ洞内滝「白龍の滝」が姿を現す頃だ、水が流れる音も聞こえるので付近までは来ている筈。
美しき石舟沢鍾乳洞、実はここからが本番だ。
第2ホールに到着、そして正面に洞内滝「白龍の滝」を確認。ケイブでシャワークライム、うーん素敵。コレがヤリたくてココまで来た様なもんだしなー。
周囲を確認するとビレイ用に打込されたアンカーが数箇所見受けられた、シャワークライムの難易度から考えてもフリーで十分、寧ろリードが邪魔に成る様な場所。初心者2人の降りは多少不安だけれどまぁ取り合えずはフリーで登りましょうか。
トップはいつもの相棒、週4ボルダリングの経験値はダテではなくてサクサク登攀していく。今回インナータイツを着用していない彼は出来る限り濡れない様に多少無理な体勢だ、その位の余裕は十分に残せる難易度で安心した。
※ 洞内で川や滝が在る場合の装備
これは一概には言えないのだけれど洞内に川や滝が在り、シャワークライムや地底湖ダイブが必要な場合はドライスーツやドライタイツが必要です。外気温と関係なく鍾乳洞などの洞窟内は通年10℃程の気温、寒さ対策と水に濡れた時の揮発熱に因る体温低下は自覚出来ない程の危険性を秘めています。石舟沢鍾乳洞の場合、中級者以上ならば殆ど濡れずに全ての行程を終える事が可能ですが万が一を考慮して是非ドライスーツなどの対策を行って欲しいところです。
水量はそこまで無いのだけれど水圧と言うか、勢いが在って飛散した水で濡れるのが少々嫌だったかなぁ。兎に角洞内は寒いので体温は出来る限り下げたく無いのです。
弟子(2*歳♀)が相棒の様子伺う、撮影の邪魔だから入ってくんな。シャワークライムは以前房総の「田代滝」で経験させているから大丈夫かな…どうだ、弟子。行けそうか?
「大丈夫だ、問題ない」
妙に男っぽい声で返答、どうやら進研ゼミの予習が効いてる様だ。
実はこの後更に奥まで進み、アレコレと見聞したのだけれど夢中で遊んでしまい撮影レス。間滝メンバーの彼は昇りではでは無くて帰路で降っている最中の模様です。
因みに弟子(2*歳♀)は初めてずくめのケイブで腕の筋肉がパンプしてしまい、誰ぞが打ち込んだラペリング用のアンカーを使用させて頂きました。上下の九の字(プーリーレスで人間がプーリーの代わりに成る)でビレイを取ると言う狭くて変則的なラペサポートで弟子を降下させる事に成功、これも良い経験です。
それと実は途中復帰路が解らなくて40分位迷ったのは内緒ですよ、ええ。
外に脱出出来て一安心、不要な装備をパッキングして付近の探索+撮影開始。予定通り14時に洞内から出る事が出来たのでユックリと帰る事にします。
この場所、夏に来ると本当に茂々しくて美しいんだよなぁ。盛緑期まではもう少し掛かりそうだ。
大自然すなぁ。
石舟沢鍾乳洞を要する中津川水系の石舟沢、藤十郎沢も同様に沢のアップダウン、涸れ、ナメ、ガレと実に起伏に富んだ沢歩きを楽しめる。前半は崖横の斜面を緩い地面で横断したり信用出来ない木道を歩いたり、後半は沢を出たり入ったりガレ越えしたりと本当に面白い。
中津川右俣右沢は八丁峠へ至る行程としても良いし右俣左沢は狩倉岳へのアプローチとしても沢山の絶景ポイントを提供してくれる、入林規制が解けたら是非歩いて欲しいコースだ。
ちょ、ステップエイダーが垂れてますよ。
それでは帰路にて撮影した石舟沢のダイジェストイメージを数枚、危険な場所(冒頭の入林規制の発端と成った事故現場含む)も在りますが何処も大変美しいので在ります。
鍾乳洞も美しいのだけれど登山と沢歩きとしても大変魅力的な石舟沢、如何だったでしょうか。リベンジケイビングとして再訪した「石舟沢鍾乳洞」、再訪者の僕らでさえ新しい発見が在ったし規制解除の一報が入れば是非とも訪れたい場所と成りました。
暫くは埼玉県の行政もリスクカットの為に林道整備などは行わない様ですが出来る限り早期の規制解除を願わずには居られません、また行くぞー石舟沢ぁー。
とても疲れた方々の図、この後大渋滞に巻き込まれて帰路の予定が5時間も押すとは微塵も思ってない方々の図でも在ります。
本当の地獄はこれからだ。
弟子(2*歳♀)ではなく、弟子の足跡はちょっとかわええと思ってしまった。
ウロチョロし過ぎ。
石舟沢鍾乳洞
中津川水系の石舟沢右俣に小さく口を開く鍾乳洞、しかしその実態は蟻の巣の様な構成を要する迷路状の中規模鍾乳洞。埼玉県有林内は「石舟沢鍾乳洞」、「藤十郎沢鍾乳洞」、「仏石山の竪穴」それぞれを入林許可制(+入洞許可制)にて管理(一部PCC/パイオニアケイビングクラブが管理)していましたが2012年に発生した石舟沢の登山道滑落事故をうけて中津川水系全ての森林道(登山道、木道、旧道)を進入禁止に。同時期に周辺一体の鍾乳洞も全て入洞禁止としました。
複数の入口が存在しメジャーな入洞口は石舟全面の2箇所、それと迂回した上部の竪穴。上部はリペやチムニーの技術が若干必要な場合が在る、また洞内には埋没した箇所も在ってディギングしないと進めないかなり薄いルートも存在している。難易度としては、
行程:★☆☆☆☆
入洞:★★☆☆☆
洞内:★★★☆☆
総合:★★☆☆☆
この様な感じだろうか。登山に慣れ親しんでいれば行程は楽、入洞時に若干の狭さを感じさせるものの撮影機材などが無ければ問題なし。洞内は複数の分岐が存在して初心者は若干迷う可能性在り、また白龍の滝でバーチカルな登攀が在るので留意して欲しい。
総合的には初心者でも経験者(ケイバー)が同伴すれば難しい事はないしスリング程度でロープは必要無い、しかし準備と装備は必ず行って欲しい地形では在ります。
最後に。この石舟沢鍾乳洞は観光地化された鍾乳洞では在りません、観光気分で来訪してもルーファン次第では脱出出来ない事も考えられます。また登攀技術が無い場合、記述した「白龍の滝」や第2洞口で滑落する可能性も否めません。
ケイビングは総合登山です、トレッキング、クライミング、ダイビング。それぞれの技術が合要して初めて楽しいスポーツと成る事を念頭において行って頂ければ幸いです。
因みにこの後以前歩いた西沢渓谷横目に山梨県経由で帰宅する事に、と言うのもこの「西沢渓谷」の帰りに食べたほうとうの味が忘れられず、わざわざ遠回りして食べに行ったのだ。
まずは軽くジャブとして馬刺しと山芋の刺身、旨い。
アッパーカットのほうとう定食、旨さ爆発。まさに無慈悲、非常に無慈悲な美味であります。
山梨県で食べるほうとうはまあ何処でも美味しいけどココはオススメですよ。
富士見茶屋いろり
http://www.d2.dion.ne.jp/~irori140/
郵便:404-0012
住所:山梨県山梨市牧丘町室伏2361-3
電話:0553-35-2176
入林規制(入洞禁止)区域なので地図リンクは不掲載です。
アプローチ
秘境及び廃墟物件は自然保護と建造物保護の為に不掲載としています、申し訳御座いません。
地図リンク
秘境及び廃墟物件は自然保護と建造物保護の為に不掲載としています、申し訳御座いません。
※ ケイビングはとても危険ですが楽しいスポーツです、興味が在る方は御連絡下さい。簡単なレクチャーの上、初心者物件をご紹介致します、また同行されても結構です。
※ ケイビング団体は国内幾つか存在します、その中でもイチからレクチャーしてくれる団体も在る様です。探して問い合わせ、ショップや団体単位でケイビングを勉強するのも良いと思います。
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