約10年の沈黙を破ってウェブサイトの更新を再開した廃墟ブームの火付け役、栗原亨さん。2013年に新しく出版された著書「新・廃墟の歩き方 探訪編」をトリガーに本格的に活動を再開する事に成った、栗原さんと言えばウェブ上に殆ど廃墟を取り扱ったサイトが無かった頃から精力的に物件を紹介し続けていた偉人。こりゃーちょっとお話をお聞きしたいと思いまして、取材の申し出にも快く承諾を頂いたのでインタビューを行って来ました。
モニターの向こう側の人だった廃墟と言うカテゴリーの雄、そんな同好の大先輩を目の前にして短い時間でしたが沢山のエピソードを聞く事が出来ました。長かった沈黙、そして今に成っての活動開始。沢山の人が待ちわびたウェブサイトの更新再開も含め、今後の展望を交えながら「栗原 亨」と言う人物に迫ります。
2013年7月某日、待ち合わせ場所に姿を現したのは本当に普通の、と言っては失礼かもしれないけれどギラギラしたオーラを纏う事もない優しそうな雰囲気の人。そこから少しだけ話しながら夜の街を歩き、取材の為に設けた行きつけのウイスキーバーへ移動。
腰を降ろし、沢山在った聞きたい事をぐっと抑えてインタビューは開始される。それではこの最初の質問を皮切りに完全復活された「栗原 亨」さんに色々とお話を伺うとしよう。
nee
始めまして、6FROGS DESIGN WORKS のneeと言います。この度こんなウェブ上の廃墟と見紛う腐れサイトの生意気な申し出に快くお応え頂き有難う御座います、出来る事と言えば土下座位しか在りません。土下座しても良いですか、今。むしろさせて下さい、好きなんですよ、土下座。
栗原
こちらこそ宜しくお願いします、栗原です。
写真引用:2010年「廃墟ナイト」での栗原さん│COPYRIGHT (C) TOKYO CULTUER CULTUER
nee
ど、土下座は…いや、はい。宜しくお願いします。さて、先ずは誰もが気に成る最初の質問をさせて下さい。
栗原
はい。
nee
この10年、表立った発表や活動は在りませんでしたね。この間はどうしていたのか、例えば廃墟から離れていたとか別の趣味に没頭していたとか。そして何故現在に成って活動を再開されたのか、やはり最初にお聞きしたいのはこの件ですね。
栗原
何もしてなかったと言う訳ではありません、実はこの沈黙の期間もコンスタントに廃墟には行っていたんです。廃墟に飽きたとか、別のカテゴリーに目覚めたとか、そんな事ではないですね。確かに仕事で忙しい事も在りますがウェブサイトの更新を行っていなかった事意外に大きな変化は在りませんでした。
nee
そう言えば随分と前ですがトークショウに出てましたね、確か2008年頃に。
(2008年09月06日にジュンク堂新宿店で開催された「廃墟という名の産業遺産」刊行記念トークイベント「秘密の廃墟、廃墟の秘密。」の栗原亨×田端宏章トークショウ)
廃墟という名の産業遺産→http://amzn.to/13cF5J9
栗原
ああ、ジュンク堂の。
nee
そうそう、えーと誰でしたか…廃墟の本を出版されていた方で。
栗原
田端さんですね。
nee
そうです、田端宏章さん。確か2000年前後の廃墟ブームの時に出版されて、しかも当時は「廃墟本」と言うカテゴリーのフォーマットが殆ど無かった時代に濃厚な内容を上手く編集されていて。確か「懐古文化綜合誌 萬」だったと思いますが。
懐古文化綜合誌 萬→http://amzn.to/18zkCTg
栗原
その田端さん。新宿のジュンク堂さんからトークショウの話を頂いて、内容は「廃墟という名の産業遺産」刊行記念の販促だったと記憶しています。
nee
2008年と言うと廃墟ブームが一旦落ち着いた頃ですね、最近はまた少し盛り返した感が在りますが。
栗原
1990年代はまだ廃墟って物が一般的に認知されていなくて、どうしても「危険な場所」、「危ない雰囲気」、「不良の溜まり場やホームレスが住んでいる」などの暗くて湿ったイメージだったんですよね。だから昨今の様な「写美的な撮影対象」と言うとは全くかけ離れていて。
nee
そうですね、2000年位からは純粋な「廃墟が面白い」と言う探索的なブーム構築記。最近は「廃墟が美しい」と言うブーム転換期、の様な。
栗原
それでいくと私の1990年代の廃墟へのアプローチは黎明期と言ったところでしょか、誰も知らない場所に単身訪問して日常とは違った体験を欲していたんだと思います。
nee
結果、その後の廃墟ブームに。
栗原
自分が先導したのか、それとも時代的に偶々その様な流れが在ったのか。何れにしても私自身は「廃墟」と言う物に対しての心構えは変わっていませんね。
nee
と、言うと?
栗原
特に最近。ここ2~3年の新たな廃墟ブーム、実に沢山の人が日本全国の廃墟に訪れて写真をネット上に掲載しているでしょう。私が廃墟探索を始めた頃には全く考えられなかった状況です、しかも雰囲気もずっとライトに成ってる。
nee
確かに。
栗原
廃墟って危ないんですよ、そして全然美しくなんか無い。だって「廃墟」ですよ、廃墟。人も住んでないし管理なんかとっくの当に放棄された場所、建造物としても昔の規準で建築されている訳だからアスベストとか色々と問題も在る訳ですよ。
そんな中に「綺麗な撮影対象物が在るから取り敢えず撮りに行くか」って、これって別に「廃墟」じゃ無くても良いし危険な思いをしなくても他に撮影対象は沢山在る訳で。先程も会話の中で少し出ましたけど「廃墟が美しい」って言うのは根本的に何か違うんじゃないかと。
nee
ああ、この辺の話は丁度後ほど詳しく聞く予定だったんですよ。改めて後程お聞かせ下さい。
栗原
はい。
nee
で、トークショウ。丁度この時期って表立った活動は表面上は行っていなかった時ですよね、なのにいきないトークショウ。
栗原
いや、いきないと言うか。出版社さんからはずっと「次の本出さないか」って、ただ私が引き伸ばしてしまっていたのが正直な所ですね。でも廃墟には行っていたんです。
nee
そして2年後、丁度今(2013年)の廃墟ブームの再起点と成る位の2010年。カルカル(東京カルチャーカルチャー)で廃墟イベントとしては最大規模の「廃墟ナイト」へ出演。
栗原
そうですね、私としては初めてのメインでのイベントでした。この時は沢山の人にも来て頂いて、私も廃墟に関する沢山の話をして。ウェブサイトでのレポートとはまた違う雰囲気と言うか、色々と楽しませて頂きました。
まだハッキリと言えませんが今年の8月にもカルカルでやる予定ですよ。
nee
え?
栗原
今年もやるんですよ、廃墟イベントをカルカルで。
nee
ええ?
栗原
新しく発売した書籍の販促も兼ねてですけどね。
nee
そ、それは何気にビッグニュースじゃないですか。まだ何処にも告知されてませんよね?
栗原
はい、詳細が決定すれば直ぐにでも告知したいと思います。丁度カルカルの店長さんとも話を煮詰めている所です。
※ 2013年07月30日 詳細が発表されたのでイベントリンクをメッセージボードに追加しました
写真引用:2010年「廃墟ナイト」での栗原さん│COPYRIGHT (C) TOKYO CULTUER CULTUER
東京カルチャーカルチャー
nee
と、言う事は長い沈黙を破って活動を再開されたのは書籍の販促がメインなんですか。
栗原
そうでは無いです。確かにタイミング的に狙ってはいますが先程話した通り、廃墟の探索自体はずっと行っていましたし。トリガーには成ったかなと言う程度でして。
nee
ウェブサイトの更新は正直驚きましたよ、恐らく随分と沢山の方が「本当に更新されたのか」って思った筈です。
写真引用:久々の新物件「物件No.235:イルカ島:沖縄県」の一枚│COPYRIGHT (C) RUINS EXPLORER
nee
月並みなんですが、1000物件を越える廃墟を訪問された栗原さん。恐らく「廃墟」に興味を持ったキッカケと言うのが在った筈なんですよね。ウェブサイトの予告物件だけでも202件も在りますし。
栗原
ああ、在りますよ。
nee
やはり。
栗原
昔は私自身も「廃墟」と言う物に特別な意識というか、そんな物は在りませんでした。元々は心霊スポットをアチコチと廻っていたんです、「心霊」自体は大の否定派なんですけどね。
nee
で、その心霊スポットの中で出会ってしまった、と。
栗原
この話は結構知られていると思うんですが、トークショウなどでも必ず出る内容ですから。
写真引用:2010年「廃墟ナイト」での栗原さん│COPYRIGHT (C) TOKYO CULTUER CULTUER
nee
そうでしょうね、因みに私は栗原さんのサイト「廃墟エクスプローラー」をキッカケに「廃墟」と言う撮影対象に出合いましたから。「物件No.11:廃村峰:東京都奥多摩」だったと思います、それと「物件No.60:金子邸:栃木県」。兎に角非日常的でわくわくしながらモニターを眺めていました。
写真引用:廃墟エクスプローラー「物件No.011:廃村峰:東京都奥多摩」の一枚│COPYRIGHT (C) RUINS EXPLORER
物件No.11:廃村峰:東京都奥多摩
http://www2.ttcn.ne.jp/hexplorer/hsmine.htm
物件No.60:金子邸:栃木県
http://www2.ttcn.ne.jp/hexplorer/kaneko.htm
こう言う何か「ああ、何か面白そう」って、この対象で写真撮ったらどんな感じに成るのか解らない感じ。そんな探究心的な物が在りました。
栗原
成る程、私は特に気にもしてなかった心霊スポットなんですよ。ある結核病棟が在りまして、その病棟の廃墟に何とも魅せられたと言うか。
nee
モニター越しとは違った感銘を受けたんですね、実際その場所に居る訳ですから。
栗原
そうですね、美しいと言う言葉より。なんだろう、こう興味を持ったんですよ「廃墟」と言う物に。
nee
それからは言うに及ばず、廃墟ブームへの流れが少しづつ出来上がる訳ですか。当時は恐らく無かった筈ですから、「廃墟」に焦点を当てたウェブサイトは。同じ様なカテゴリーだとどうしても「心霊スポット」に成ってしまう。
栗原
まあ元々はその方面からでしたけど。それでも目新しいモノを始めたのは面白かったですよ。
nee
個人的に聞きたかった事が在るんですよね、「廃墟エクスプローラー」のコンテンツに関して。これ、本当に本人にお聞き出来るのは良かった。
栗原
なんでしょう。
nee
房総のある物件で遺体を発見されてますよね。
栗原
ああ、その事。
nee
私も地元が千葉県であの物件は良く知ってました、廃墟エクスプローラーであの物件が紹介されていて読み進めて行く内に引き込まれるモノが在りましたね。あのレポートだけはちょっと異質と言うか。
栗原
山王荘、アレはね。あの物件は妙に戸締りがシッカリしていて、グルっと回っても中に入れる糸口さえ掴めない。そんな物件だったんですよね、それで1箇所だけ。何故か1箇所だけ開いてる所が在ったんです、まあそうと成れば開けますよ。ガラガラっと。
写真引用:廃墟エクスプローラー「遺体を発見した千葉県の物件「割烹旅館 山王荘」│COPYRIGHT (C) RUINS EXPLORER
nee
ガラガラっと。
栗原
そしたら、こう。なんだろう、吊られてて。下にもこう、千切れてしまった”物”が、ね。
nee
そうとう驚いたんじゃないですか。
栗原
驚きはしましたが、何か冷静で。
nee
警察などにも届けた、と。
栗原
そう、丁度建物周辺は携帯の電波が届かないから山を降りて道路まで戻って。それから警察に通報。
nee
その流れはサイトでも紹介されてますね。
物件No.18:割烹旅館 山王荘:千葉県
http://www2.ttcn.ne.jp/hexplorer/sanou.htm
栗原
私的には見つけて欲しかったのかなぁと、そんな風に思うんですよ。だって何処も施錠されていて、入る場所が無くて。それなのにこの戸だけが開くなんて、呼ばれたのかもしれません。
nee
他にも廃墟探索されている方で遺体を発見されている内容のレポートを幾つか散見出来ますね、やはり場所が場所だけに見つけ易いのかもしれません「廃墟」って。
栗原
あー、実は。
nee
?
栗原
いや、私は廃墟探索家と同時に「樹海探検家」も自称してまして。樹海ではエライ数の遺体を発見してましてね、そりゃあ10や20じゃないですよ。
nee
!!!
栗原
青木ヶ原樹海って自殺者多いじゃないですか。
nee
はい、自分も何度も入ってます。数キロ中に入った事も在りますが本当に多いですよ、通報すると1日潰れちゃう。
栗原
そう、それでもやはり通報しないと。樹海の管轄って富士吉田警察署なんですけど余りにも遺体の発見通報が多くて、私の。
nee
10や20じゃないですし。
栗原
だから慣れた感じに成ってしまう、私も警察も。遺体を発見して富士吉田警察署に電話するんですが「ああ、栗原です」って言うと警察の方が「またですか」って。”何”が”どう”して”通報”したのか省略されるんですよ、栗原です→またですかって。
nee
ははは(乾笑)って笑う事じゃないです。
栗原
それ位見つけてるって事です、だから廃墟で見つけても冷静だったんでしょうね。
nee
そうして「廃墟ハザード」が出来上がっていくと。
栗原
ああ、あれですか。
廃墟HAZARD(完成バージョン)
http://www2.ttcn.ne.jp/hexplorer/hazard02.html
nee
何か絶対見るんですよ、廃墟サイトの何処にでもリンクが貼られていて。兎に角みんなアレを貼っとけ!的に。一人歩きしてますよね、コンテンツの一部分だけが。
栗原
まあ、そうですね。最初はもっと小さな内容だったんです。その内沢山の同好の士が情報や経験を持ち寄って現在の形に収まった訳です。リンクはフリーを謳っていたし安易に廃墟へ近づけない為の防護策や抑止力にも成ればと。
nee
実際危ないですよ、ガス検知器や酸素量計測器が唸る場所も在りましたし。アスベストや崩落だって怖い。
栗原
そう、それが興味本位の人達には解らない。知ってる人が大丈夫だったから、ウェブサイトで無事レポートされてるから。そうやって危険な部分を蔑ろにして好奇心が先行してしまうんです、それが怪我や事故の最大の要因なのに。
nee
道具と知識は必要だと。
栗原
どんなスポーツや趣味でも同じです。ほら、割橋。あれもそうでしょう、危険と隣合わせ。
nee
だからこそ面白いんですよ、割橋。
栗原
あれ、良いですね。面白い、自分もやってみたい。
nee
いや、あれホントにちょっと危ないんですよ。相棒の岩屋と山屋(本当は沢屋)の私が中心に成って後続の若い人達には事前にボルダーな知識やラペリングをレクチャーしてから行くんです、ザイル1本気合と根性って訳には流石に行きませんね、実際私は落ちかけましたし。房総で。
栗原
そうなんです、危ない事。はじめから解っているんですよね、廃墟は危ないって。なのに殆どの人がテンプレートとして”廃墟ハザード”を利用(リンクコンテンツとして)するけど実際には反映されないって言う。
nee
確かに。と、言うより変わったんですよね。廃墟に対するイメージが。
栗原
?
nee
ライトに成った、良い意味でも悪い意味でもヌメっとした暗い雰囲気だった廃墟のイメージが「美しい建造物」って言う撮影対象に摩り替わった様な。
栗原
そう、それ。探検や探索じゃなくて写真撮りに行こうってノリですよね、特に最近は。
nee
だからこそ危険な場所に慣れていない人の為にも自衛手段はシッカリと押さえて欲しい、と。
栗原
まあ「ブーム」って言う一過性のモノは往々にして危険な部位はスポイルされますから。
nee
その流れで「削除物件」が存在するんですか?
栗原
削除物件?
nee
公開中の物件ページにたまーに出てくるリンク切れのレポート、在りますよね。「削除済み」って書かれてる。
栗原
ああ、あれは単純に物件の関係者から”削除依頼”が来まして。
nee
成る程。
(ここからちょっと掲載出来ない内容に話が向かう)
栗原
まあそんな感じです。
nee
取り壊しや再利用、近隣住民からのクレームなんかも在りますからね。
栗原
データは残ってますよ、全部。取り壊された物件も含めてね。
nee
サイトを通じた出会いなどは過去に在りましたか?最近の動向としては本来単身での探索がメインだった物が”合同探索”と言う新たな探索方法を利用する方も増えていますよね。廃墟サイトとして先駆けだった事も在ってサイト開設当時でも似たような”合同探索”が在ったりしたのかなぁと。
栗原
在りましたね、今のとはちょっと違うと思うけど。
nee
と、言うと?
栗原
今の廃墟サイト見てるとどれもこれも写真が”綺麗”なんです、とても美しい写真達。つまりは探索と言うより撮影の為に廃墟に行ってると感じるんです、私がアチコチと脚を伸ばしていた頃は純粋に”探索”がメインでした。だからカメラも今でもコンデジです、資料としてはそれで十分。
nee
私も撮影を念頭に置いてるのでちょっと耳が痛いですね。
栗原
何度も言いますが廃墟に関してのアプローチは「廃墟は美しからず」なんです、美しく撮る事は出来ても実際美しくはない。行けば誰でも解る事でしょうね、汚くて危険な場所だって事が。
nee
見方、でしょうか。
栗原
これは好みの分かれる意見なので私自身の心構えとしてですね、「廃墟は美しからず」と。
nee
確かに。私は地域民俗学や歴史が好きなのでレポートにその調査内容を反映させてはいますが、うーん。それでもやはり現地に赴けば「綺麗な写真を撮影したい」と無駄な色気が出るのは正直な気持ちです。
栗原
人それぞれですから、あくまで”私は”です。
nee
ですね。
栗原
で、昔はやはり同好の士って結構貴重だった訳です。廃墟が書店などでイチジャンルとして認められる様な時代では無かったですし。コソコソっと、互いに情報交換などもしながら。
nee
今は違うと。
栗原
確かに今でも沢山の廃墟を巡ってる人はいますよ、それい危険な場所でも対策もしっかりしてる。それを良い事におんぶだっこな興味本位な、ああ先程も言った”好奇心が先行”してしまう人達。そんなライトな探索者が合同探索とは名ばかりの廃墟見聞を、ね。
nee
飽きるのも早いかもしれませんね、でもそうやって淘汰されて資料性の高いサイトが生き残るのは以外と悪い事じゃ無い筈ですよ。多趣味な時代ですから。
栗原
そうですね、だから人それぞれ、あくまで”私は”です。
nee
では当時ご一緒した方達とは今でも親交が?
栗原
いや、それが殆ど。
nee
ない?
栗原
ない。
当時の方達は皆「廃墟探索」はしてないでしょうね、有名な方ですと黒魔さん、ウシロさんとか。
nee
ああ、お聞きした事があるお名前ですね。連絡も取れない状態ですか、当時の人とは。
栗原
殆ど、ですね。
nee
続け辛い趣味、と言うか。どうなんでしょう、兎に角中々続けるには勢いが必要なモノですよね、廃墟って。
栗原
です、ね。
nee
そう、今回の活動再開。トリガーが新たな書籍の発売だった訳ですけどこの書籍について、ですね。
栗原
今迄も何冊か書いてます、寄稿やワンダージャパンさんの連載なども在った訳です。冒頭でも話しましたがずっと出版の話は在ったんですよ、何年も前から。
nee
ええ。
栗原
仕事と廃墟探索を両立しながら執筆するには時間が無くて、で久振りと成った訳ですが今回出版に漕ぎ着けたと。まあぶちゃっけてしまえばサイトを長らくと放置、いや更新出来なかった理由もココに在るんですよね。実は。
nee
???
栗原
出版社さんからサイトの更新に”待った”が掛かっていたんです。
nee
え?それは…。
栗原
つまり。出版で紙媒体を読者さんに購入して貰う、それなのにウェブ上に同等のレポートが掲載されている。それじゃあ本を買ってくれた方に失礼じゃないか、と。出版社としても本を売りたい訳ですし期待もしてくれている中でウェブサイトの更新は、まあ私としてもし辛いと言うか。
nee
あ、そういう。
栗原
確かにそうですよ、比較的自由度の高いウェブ上に似たような写真や情報が在れば中には”本”を必要としない人が必ず存在する訳で。
nee
でもウェブサイトと書籍って全く別ですよね、本は本な訳ですし。
栗原
それはそうなんですが本が好きな方は総じてそう言います、が廃墟の情報を知りたい、ちょっと齧ってみたいって人はウェブサイトで満足してしまう。
nee
そうかもしれませんね、多分そうなんだと思います。
栗原
だから期間が開いた、いや開いた様に見えてしまう。
nee
活動はずっとして居たんですよね。
栗原
そう、ずっと続けていた。イベントや企画、寄稿や連載。これらを含めればそこまで長いスパンの睡眠は取って無いんですよ。ただ出版社さんとの兼ね合いでウェブサイトは更新出来なかった、情報源が「廃墟エクスプローラー」のみの方達には随分と御久し振りに成ってしまったと言う訳です。
nee
納得しました、そうだったんですね。
栗原
これからガンガン行きますよ、サイトも更新して行きますし廃墟もペースを上げて行く予定です。
nee
それは楽しみです、私自身栗原さんのサイトから廃墟に出会ったので嬉しい限りですよ。
栗原
新しい書籍が発売されたのをキッカケとして活動の気力も上がれば、ですね。
新・廃墟の歩き方 探訪編→http://amzn.to/17CYGWl
nee
最後にお聞きします。未だに廃墟と言うカテゴリーで第一人者として扱われる事が多いですよね、ブーム火付け役な訳ですし実際レポートの数も多い。時間は経過して現在(2013年)、実に沢山の廃墟系ウェブサイトが生まれています。そんな中で”第一人者”と呼称される葛藤などが在ればお聞きしたいと思います。
栗原
昔の人なんです。
nee
栗原さんが?
栗原
そう、私は確かに”廃墟ブーム”の火付け役だったかもしれません。だけれども自身のスタンスとしては”廃墟好き”の一人なんです、現在の”写真メイン”のウェブサイトでもないですから。だから昔の人。
nee
探索、ですか。
栗原
そうですね、だから重ね重ね言うんですよ「廃墟は美しからず」と。
nee
栗原さんの中では”廃墟”が好きなので在って”廃墟を写す”事は別問題だと。
栗原
コンデジで十分なんです、何せ”廃墟探索家”ですから。これが私の廃墟に対する接し方だと思うんですよ、廃墟と樹海を探索探検する者「栗原 亨」。それが今迄もこれからも根っこの部分、”廃墟探索の第一人者”や”廃墟ブームの火付け役”って呼称も”廃墟ハザード”同様に一人歩きしてるだけでして。
nee
深いなぁ。
栗原
今後もコツコツと物件を更新して、ああそれと。
nee
?
栗原
実は今ちょっと新しい事をはじめてまして。
nee
ほう。
栗原
詳しい内容は明言出来ませんがきっと沢山の人が”驚く”様な事を発表したいと思います。まあココだけの話ですがdsふtwrつお:wrつ:おぅ…
nee
それは素敵ですね、是非。是非見てみたい。
栗原
これ、実際面白いですよ。自分自身楽しみながらやってますし。
nee
形に成るのはいつ頃ですか?
栗原
まあ、もうちょっと先の話ですね。期待していて下さい。
nee
本日は有難う御座いました、貴重なお話も沢山聞けました。
栗原
いえいえ、此方こそ有難う御座いました。
nee
って言うか、家近いですよね。お互い。
栗原
ああ、近いですね。車で20分位。
nee
と、言う事で栗原さんの自宅とワタクシの家は凄く近かった。やったー。
栗原
(何が?)
無事「やったー」が出来て大満足のインタビューでした、やったー。今回の取材の大名目、新しく出版された栗原さんの新書を最後にご紹介しない訳にはいきますまい。
新・廃墟の歩き方 探訪編→http://amzn.to/17CYGWl
今回の新刊は二見書房さんから出版、「新・廃墟の歩き方 探訪編」は今迄の書籍の内容を周到しつつこの10年間で来訪した沢山の廃墟を掲載。詳しくは二見書房さんの取り扱いページへ。
二見書房 - 新・廃墟の歩き方 探訪編
http://www.futami.co.jp/book/?isbn=9784576130484
著者紹介:栗原 亨(くりはら とおる)
1966年東京生まれ。廃墟・樹海探検家。「廃墟Explorer」管理人。
著書に『廃墟の歩き方 探索編』『廃墟の歩き方2 潜入編』『樹海の歩き方』『はじめての廃墟の歩き方』(以上、イースト・プレス)、『廃墟紀行』(マガジンランド)、『ウソかマコトか!? 恐怖の樹海都市伝説』(秋田書店)。監修に『廃墟ノスタルジア』(小社刊)、共著に『ニッポン地下観光ガイド』(アスペクト)、『ニッポンの廃墟』(インディヴィジョン)などがある。
(二見書房紹介ページから抜粋)