千葉県│乾坤山 南壁ロッククライミング
滅びの美学 [ 廃墟・廃屋・遺跡・廃村・廃道 ] 探索 - 乾坤山 南壁登攀(鋸山 難壁)
サンバでアミーゴ。
抜き足差し足勇み足の愉快な仲間達が本日おっぴろげるは岩登り、熟練者様におきましては退屈極まりない内容では御座いますが何卒ご容赦を。あ、場所は房総半島の鋸山ですって。
兎角房総半島の壁は難易度が低いとされている、それは関東平野が物語る様に屹立したクライマーウォールが少ない事に起因する。勿論高低差だけがクライミングの難易度を測る指標では無いのだけれど一般的に登攀距離が長ければルーファンも慎重に成るし低くても厳しいムーヴが連続すれば完登は難しく成っていく、今回は全体的なグレードは高くは無いけれどその中でも比較的ルートが厳しい難壁と呼ばれる岩場での一幕をご紹介したいと思う。
場所は僕らにとって馴染み深い鋸山、正式名称は乾坤山と言う。以前にもこの場所はエントリーしていて内容としては旧道・廃道の類だった、今回は岩場なので興味の無い人は本当に面白くないレポートと成る事をお許し頂きたい。ただ、普段のエントリーの中でも危ない物件や場所が多数含まれる当ブログ。本職(メインの趣味って意味ですよ)の岩屋や沢屋がどの様な遊びの延長でアタックしているのか、そんな普段余りお見せしない内情を少しだけでも解って頂ければ幸いだ。
普段のエントリーでも登場する人達の格好が随分と重装備で大袈裟なのもメインに別の物件で遊んでいたり途中で急遽ボルダーな場所にアタックする事が多いって理由からでして、なので「割橋物件」参加者が通常はどんな事してるのかなぁって疑問に思ってる方も今回のエントリーで少しは解って頂けるかと思いますよ。
鋸山がどんな場所かはウィキペディア参照にて。
ウィキペディア - 鋸山 (千葉県)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%e9%8b%b8%e5%b1%b1_%28%e5%8d%83%e8%91%89%e7%9c%8c%29
1980年代後半、房総のオーシャンクリフとして関東のクライマーに注目された鋸山。最も高い所で高低差40メートルのクラッククライムが楽しめる場所として2000年代に入って再び脚光を浴びている。この幾つか在るクラックルートを開拓したのが田中栄さんだ、国内ではフリークライミング黎明期に当たる1980年代。その初期において平野が多い関東地方、中でも最も低い房総半島でクライミングエリアを貪欲に開拓し続けたクライマーがその人だ。
今回メインで紹介するのは「サンシャイン・フェイス」と呼ばれる南壁(通称・難壁)、高いフェイスが印象的な約30メートル程のザイルが必須なクラッククライムエリア。岩質が砂岩で非常に脆く、ビレイ用のプロテクションが残置されているのだけれど幾分不安要素は拭いきれない。
海外の100メートル以上のガチ登攀には程遠いけれど難易度は最高で「5.11d」と中々のレベル、それでは「割橋メンバー」の練習風景エントリーを始めましょう。
割箸に関連するエントリーは以下の専用ページからどうぞ。
クライミングには幾つか種類と言うか登攀方法が異なる事によって別呼称でジャンル別けされている、今回の様にザイルを必要とするリードクライム(※1)は必ずビレイヤー(※2)と呼ばれる安全確保を地上から行う人間が必要とされる。今回の様なクラックルートではフリー(※3)で登る方も居てジャミング(※4)を駆使して完登するのだとか、手が千切れるっての。
※ 1:トップロープを必要とする、または使用した登攀
※ 2:クライマーを地上から補助する安全確保担当、複数のビレイヤーが支点を確保する場合もある
※ 3:安全器具などのクライムギアを一切使用しない登攀
※ 4:指を特殊な形に固定してクラックに支点を置く事
難易度が上がればそれだけインターバルポイントも限られてくる訳でして、シェイク(※5)が容易に行える様にチームアタックで望むのが安全面でも体力面でも重要なのです。なので単独アタックなんて以ての外、熟練者だろうとも若いパッションが爆発寸前の怖いもの知らずだろうとも必ず複数で楽しんで頂きたいスポーツなのです。
※ 5:インターバルポイントを確保した状態で両手をダラリと垂らして休憩する状態
さて、最初は比較的難易度が低い「浮島ロックガーデン」で肩慣らし。6本在るルートから人気の「トライアングル」ルート、「サウスポー」ルートを選出。
難易度はそれぞれ、
図04:トライアングル:5.10+(★★★☆☆)
図05:サウスポー:5.10-(★★☆☆☆)
と身体を温めるには丁度良いグレード、カンテ(※6)付近のハング(※7)を超えればカチ場も多いので完登は難しくない。南壁に来る方は最初にココでウォーミングアップされると良く聞きます。
※ 6:猫背状の凸岩、壁面の横末端にある岩角(アウトサイドコーナー)
※ 7:傾斜が90度を越えたスポット、またラペリングの技術で降下方法の一つをこう呼ぶ事もある
クラックルートでは登攀時の体の動きがかなり制限される、通常の岩場ならカチガチ(※8)に限らず力点の主体と成るのは下半身の場合が多い。つまりホールドポイントを幾つ保持出来るか、その保持する体勢を複数確保出来るかが焦点と成る(事が多い)。ボルダーな人は総じて安易なフットホールドを嫌う、また上級者に成ればフィンガリー(※9)なルートを好むだろう。
※ 8:カチ→かちっと掴める(指間接1本程)、ガチ→がちっと掴める(指間接全体で抱き込める)
※ 9:連続した細かなエッジで指を酷使するスポット
しかしクラックルートはそうはイカの●玉でなのである。
ルート自体がクラックで形成されている為、ルーファンはもとより身体の動きや指動のテクニックまで似通ってくる事が多々在る。今回のステージは砂質と言う事も在り、その砂岩の脆さからどうしても確立されたクライミング(スタイル・ルート共に)に成ってしまう。
まあプロテクション(※10)を使用すれば多少動きの幅も広がるし楽にも成る、この辺は好みの分かれるところだろう。
※ 10:安全確保の為のクライムギア
場所を移動して南壁で2番目の高低差が在る「サンシャイン・フェイス」へ。
サンシャイン・フェイスは今回のエントリーのメインの岩場だ。このサンシャイン・フェイスには5本のルートが確立されていて今回は一番難易度の高いセンターの「奥の細道」を登る、残りの4本含めた難易度は、
図無し:フィンガーレイク:5.11+(★★☆☆☆)
図無し:奥の細道:5.11+(★★★☆☆)
図無し:寒太郎:5.11+(★★☆☆☆)
図無し:サンド・シャワー:5.9(★★☆☆☆)
図無し:エブリボディー:5.6(★☆☆☆☆)
と言った所。高低差は30メートル、鋸山南壁では余り人気の無いフラットな登攀ステージだ。
アタシには身体が硬くて出来ないヒールフック、相棒はまだまだ余裕のご様子。この時も2週間程前のボルダリングの大会で痛めた身体(肋骨が折れてる状態)で登って行く、全くのアホ(身体能力は高い)である。
大会当日の彼曰く、「冷凍カジキに殴られた様な衝撃」との事。
この人、たまにランジ(※11)で越えたりするから見てる方はオッカナイ。ビレイやセーフティ取ってる場合は良いけれど余り無理はせんといて。
※ 11:手の届かない場所へジャンプしてフック、バイトする事
さて、如何でしたでしょうか。割橋メンバーは岩屋と沢屋がメインで行っていて山未経験者はある程度経験を積んでから参加させています、その理由がアプローチにこの様な場所を越えなければ成らなかったりギアの使用方法を良く理解しないと安全面で不安要素が大きく成る事を懸念しての事だったりします。
たまに物好きな方から「割橋や秘境にご一緒したい」とご連絡を頂きます、とても在り難い事ですし奇特(褒め言葉)な仲間が増えるのは大歓迎です。ですがまずは沢や比較的難易度の低いガレを経験して頂いてからと思っています、鍾乳洞なんかも同様で更に難易度は上がり、こちらは各種山岳保険に加入されてからの参加と成るので敷居が高いかもしれません。
最後にこの場所の説明を再度簡単に記載して終わりにしましょう。
最高でのロープスケールが40メートル近いこのステージ、迂回ルートが無い為にビレイヤーのザイルには倍の長さが必要です。また鋸山自動車専用道路の途中に位置する為にアプローチは車のみ、何より企業の私有敷地内なので通常は登攀禁止の場所なのも注意したい点。
しかしそれが何故、県内外のクライマーの人気ステージと成っているか。現在は鋸山自動車専用道路料金所にいる管理人さんから黙認という形で内諾を得て皆さんこの場所で楽しんでいます、それを可能としているのはこの場所を開拓した田中栄さん及びその関係者さんの日頃の献身的な努力による物です。また現在でも登攀者が自主的に草刈や自然荒廃の手入れを行っており、ステージの清掃活動等も分担してされている様です。
黎明期に開拓されたルートが殆どのこのステージ、一時期人気が下火と成った20年間で随分とルートも変化しています(経年劣化などで)。
他のクライマーサイトを覗いても「現在登攀可能なルート数も支点の整備状況から限られているのが実状」と書かれており、限りあるルートを現在の登攀者がマナーやリテラシーを守る事で楽しめると言う事を念頭において欲しい場所でも在ります。
「残置支点についても登る前に必ず安全を確認してください」とアチコチのサイトで注意されている場所なのでこのステージにアタックされる方は必ず熟練者とこの場所に何度も訪れた事の在る方を同伴して下さる事を切にお願い致します。
取っ付き難いスポーツ、ロッククライミング。しかしながらその実、絶景と己の身体能力を極限まで垣間見れる楽しくて面白いジャンルでも在ります。このエントリーで少しでも興味を持つ方が増えて頂ければ何より嬉しい事なのです、いやホントですよ。
って、事で本日は以上です。
アプローチ
国道127号線を南下して館山方面へ、高速を利用なら富津金谷ICで下車。国道沿いに鋸山自動車専用道路の大きな標識が見えるのでそれを目印にどうぞ。
地図リンク
http://goo.gl/maps/J0jkA
photograph - nee
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永遠の輝きはダイヤだけじゃない、ニッチなニーズにリッチにお応え。虫好きには素敵な贈り物として、虫嫌いには克服のトリガーとして、小姑には日頃の恨みと感謝を添えて是非お一つ如何ですか。