千葉県│怒田線 怒田の滝
滅びの美学 [ 廃墟・廃屋・遺跡・廃村・廃道 ] 探索 - 怒田線 怒田の滝(水路隧道/怒田線川回しの滝)
房総半島は隧道天国だ、それも天然の岩を素掘りで掘削した農業用バイパス「川廻し」と言う特殊な隧道達。一部の林道ライダーさんを始め僕らの様な山屋(沢屋や岩屋も含む)にはとても馴染み深い美しく、そして心揺さぶるこの川回しによって作られた造形美を今回も拝見しに行くとしましょうか。
過去に房総半島で言えば下記リンクの2箇所、
を取り上げた、何れも房総半島と言うパっとしない低い山間部の沢だけれども大変美しい景観を見せてくれる、特に「七ツ釜渓谷」は山梨県の本家「西沢渓谷/七ツ釜渓谷」に見劣りしない個人的にも大好きな場所だ。そして今回、やっぱり房総は侮れないの最もたるを実感させてくれる「林道怒田線・怒田の滝」をご紹介したい。
この場所、バイクで行けない事はないけど一応徒歩林道として認識してもらいたい。それには幾つかの理由が在るのだけれど何れも自己責任を伴う(危険立地の為の怪我・車両走行禁止区域)が理由から、出来れば自分の足でこの怒田の景観を楽しんで欲しい。あ、同行者はいつもの如く割橋Pの相棒さんです。
それでは今回のレポートを開始しよう。
この怒田と言う場所、恐ろしく厄介さんな場所に存在する。まずアプローチルートのスタート地点に行く時点で既に苦行だ、県道から農道に入ると普通車がギリギリ走れる道幅に成る。そこから更に山間部を無理矢理切り開いた様なマディ+小ガレのオフロードコース、走れるのは軽トラかジムニー位。今回は普通車で進入して引くに引けない状態で走行したけれど2度と普通車のサイズでは行きたくない、それと天候も暫く晴れが続いた状態じゃないと急勾配での坂でスタックする事に成るので注意して欲しい。
地図はこの激しい車での走行を追えて林道の始点(車のデポ地)から目的の怒田の滝までの行程、幾つかの点線(林道)上に隧道表示が在る。点線林道3つ目の直ぐ脇に河川隧道(川廻し)が描かれているのが解るだろう、そこが怒田の滝と成る。
4つ目の隧道の脇にはちょっと珍しい風景が見れるのだけれど時期的には盛緑の頃がオススメなので何れ撮影してお見せしたい。(但しヒル地獄)
この滝、実は正式名称が存在しない。通称で「怒田線(怒田林道)の滝」とか「怒田の川廻し」などと呼ばれているけれどそもそもこの場所がマイナーな所でして、文献を確認してもやはりこの滝の名称は判明しなかったのでこのエントリー内では「怒田の滝」と記載させて頂きます。
それではアプローチ開始、デポ地から緩やかなマディの下り坂を歩くと「第一隧道」が姿を見せた、これは川廻しとは関係なく農業用地確保の為に山間部への連絡路を製作する過程で掘られている。
怒田線第一隧道、直線貫通で距離も短い崩落が所々在るけれど問題なく通過出来る。この辺までは流石に余裕で相棒も、
「むーすーんでひーらーいーて、しーぼりだーす、きみの内臓(もつ)ー」
と、懐かしい歌を歌っている位。僕はと言えば何故か頭の中で「健康になりたーいー、あああ、おうちにかえりたーい」ってレピッシュなんて今の奴、誰も知らねぇよ。
(photograph:+10)
数分歩くと第二隧道だ、この第一隧道と第二隧道の間隔は短い。しかし後の第三隧道までが非常に長く、また途中ブッシュで覆われた平地草原を歩くので迷う方も居ると聞く。
怒田線第二隧道、少々傾斜がついていて隧道内の床もガレっている。歩く時は注意して欲しい、また多少だけれど折れているので日光の遮光角度によっては暗い時も在る筈。ハミィに飽きたのか、
「らららコッペパン らららコッペパン」
と、呪文の様に繰り返し歌っている相棒。彼の中で何かが目覚めようとしているのか、それともただ疲れているだけなのか。いや、恐らくその先の歌詞を知らないのだろう。
(photograph:+10)
問題のブッシュ、本当に歩き辛い。30分~40分程のルートなのだけれどココで道を見失って滝まで2時間以上掛かったと言う話も聞いた。
とてもじゃないけど真夏に山歩き素人さんが来ると突破出来ないブッシュ、盛緑の時期には人の背より高く茂ります。蜘蛛、スズメバチ、ヒル。ホントに素敵な体験が出来る筈です。
このブッシュ地帯で沢から距離が出ますが直ぐにまた合流します、暫く沢沿いに歩くと沢と林道の高低差が出て来ますが気にせずに。
歩き出して15分程、だがこのブッシュ地帯には僕もウンザリ。もう帰ろうぜ、ベータで録画した寺内ヘンドリックス見てぇんだよ。何で音効さんDVD化しねぇんだよっ!
音効さんと寺ヘンのDVD、生きてる内に出るかなぁ。
(photograph:+10)
薄っすらと残る林道痕、倒木を潜りガレを越えるとやっとこさで目的地の川廻し「怒田の滝」裏側に到着します。
(photograph:+10)
うっうー、漲ってきましたー。丁度川廻し掘削の頂上部、滝の上って感じの場所からちょっとだけ引いた画を撮影しようと相棒がカメラを向けている所。この後に下から登ってまたココに来る事に成るとは、な。
滝頂上部からこの景観、美しいぜ怒田さんよー。房総の沢って本当の本当に馬鹿に出来ないよなぁ、寧ろ沢屋には起伏に富んだ楽しめる多くの表情を魅せてくれる素晴らしい地域だ。
さて、僕らはと言うとグルっと巻いて滝の下に向います。
もげるで、しかし!
何がもげるのかはご想像にお任せするとしてまずはこの眼前に映し出された美しき怒田の滝、ここか…ここがリインカーネーションの輪から解き放たれる地なのか。
「は、裸エプソン…」
相棒がおかしい、ボソリと吐き出される言葉がおかしい。既に手遅れなのか…。
おっぴろげーしょん
何をおっぴろげるのかはご想像にお任せするとしてまずは周囲の立地と撮影出来そうなポイント、アングルなどを確認する。出来ればこの滝もアタックしたいのでその時の画を押さえる場所も確保したい所だ。
沢に降りて撮影開始、いやぁ来て良かった。ココは来て良かったわ、ホント。しかしどうしても滝を見ると…ねぇ。低いか高いかじゃなくて複雑な形状してたらどうしても登りたくなるじゃーありませぬか、うん…登ろう。
滝とは対面のガレを登り、足場を確保。今日はハーネスとロープが無いから2人ともフリーの状態だ、しかも撮影用のカメラ持ち。慎重に登る、相棒は滝の方のフックとステップポイントの確認をしに降りる。この人指先程のポイントが在れば何処でも登る、岩屋なのに最近はボルタリングばかりで自然に飢えているのかも。
シャワークライム開始、写真を見て貰うと解るとおり複雑な形状だがとても低い。つまりは滑落が心配と言うより本人的には水に余り濡れたくなくて慎重に登っていると言う贅沢な状態。
難易度も低く、1分も掛からず登れる。しかしアオリの画が欲しいからソコに居ろと言う号令に素直に従う彼は「寒い寒い寒いさ…」と繰り返していた。
帰りも在るし早めに撮影しようか。
こっちが中間地点の時点で早々に頂上付近最後のステップ、流石に普段からボルタリングで鍛えている人は早い。上達の秘訣を相棒に聞いてみた。
「ああ、俺の背後霊って元素記号ですから」
???
最後の最後でまた解らん事を…その後2人で良からぬ計画を立てる。この滝の更に上、掘削された地形の頂上部からラペで降下しようと言う物。帰りに少し沢を遡上して巻きルートとして利用出来そうなガリーも発見、恐らく冬季から来年(2013年)の春頃に挑戦したいと思っております。
怒田の滝(怒田の川廻し滝)
怒田地区は山深く細々ながら製炭産業と山菜の出荷で山間部産業を展開していた古い土地だ、房総の他の川廻し同様に山間部での農業に必要な土地や水を用立てる為に水路隧道が幾つか掘削されるのだけれどその一つとして生まれた滝がこの通称「怒田の滝」。しかしこの滝の落差が低く、また本来の沢からの水量が枯渇気味だった為に本来のバイパスとしての役目は長く務める事が出来なかった資料に在る、林道も古くて現在は狩猟解禁期間の狩猟道、害獣駆除の連絡路がメイン。たまに生粋の林道ライダーがアタックに来る様だけれど地域の人は勿論歓迎していない、今後は地元の方が中心と成って車両進入区域(怒田線の一部区間)での走行を発見次第写真を撮影し、ナンバーを控えて警察に届けるそうだ。
沢の遡上に特別な入林許可などは必要ない、歩く分には問題ないので狩猟解禁期間の服装には注して楽しい沢歩きと美しい「怒田の滝」を堪能して欲しい。
と、言う事で今回のエントリーは以上です。
アプローチ
亀山湖付近国道465号線、上総亀山近くの亀山郵便局先交差点から坂畑地区に入る。この細い道路から地元の農業道として使われている生活道路なので大きな車両は進入出来ない、途中からマディ+ガレ+急勾配とオフロードコースの体。軽トラかジムニー推奨、せめて軽自動車で来訪して下さい。
地図リンク
http://yahoo.jp/tG9jZC
photograph - nee