千葉県│七ッ釜渓谷 梨沢不動滝 再訪
滅びの美学 [ 廃墟・廃屋・遺跡・廃村・廃道 ] 探索 - 七ッ釜渓谷(梨沢 七ッ釜渓谷/梨沢不動滝/大滝/天神山不動滝)
今回は沢歩きビギナー向け(当ブログの新メンバー向け)のレクチャーレポートです、表記や表現に多少面倒な記述が散見しますが何卒お付き合い下さいます様、宜しくお願い致します。
房総の大正義、懐が深くて実に本格的な沢歩きを提供させてくれる梨沢七ッ釜渓谷。県下では今の所一番好きな沢で在りまして今年も梅雨前にお邪魔しに行って来ましたよ、昨年より1ヶ月程遅いのに今回は緑の茂りが少々不満でしたがやはりその美しさにはウットリ。
2012年に歩いた七ッ釜渓谷の模様は以下リンクから。
さてさて、今年は何処まで行くのかと申しますと前回と同じ梨沢不動滝でして。と、言うのも岩場初心者で在る弟子(2*歳♀)のシャワークライムの練習場として難易度も低いのでリードを経験させようと思った訳です。
やってる事は前回とほぼ同じですので写真を中心に簡単な沢歩きの要点等を織り交ぜたレポートをお届け致しましょう、今迄アウトドアに大して興味も無かったビギナー向けのアドバイスを説明しながらですが少しでも登山や沢歩きを知って頂ければ幸いです。
詳細は先程の「2012年の七ッ釜渓谷レポート」の模様を記載したレポートリンクをご覧下さい。
七ッ釜渓谷の入渓地点、今年は昨年に比べて随分と水量が少なく流れも弱い。そう言えば天気予報でも今年(2013年)の5月は随分と降雨量が少ないと伝えていた、こりゃあ梨沢不動滝の流水量も少なそうで不安だなぁ。
沢歩きのポイントとして実は水深や川の流れの強弱は大きな考慮点と成る事をまずは覚えておいて欲しい、何故かと言うと「ナメ」具合に大きく関係してくるからだ。水深が在る程度あり、流れも在れば自ずとナメは形成され辛く成る。反対に薄い水面と流れの無い所では必然的にナメに注意しなくては成らない、まあこれは岩質や水源、周辺の植物と日照時間にも左右されるのだけれど。
七ッ釜渓谷の前半は水深30センチ~20センチ程の沢の中を歩く、川底は小さな浮砂利(※1)で少々歩き辛い。入渓して暫くは同じ様な風景と倒木などが行く手を遮るが問題無く歩ける筈だ、しかし砂利が小さいと言うことは小規模のポットホール(甌穴)にも注意しなくては成らない。
※1:砂利以外にも泥質土砂などで踏み込みが深く、また砂利の玉もサイズが不揃いな場合が多い。
甌穴 - ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%e7%94%8c%e7%a9%b4
弟子(2*歳♀)は2度目の梨沢だが相棒は始めての来訪、自ずとこの美しい風景にテンションも上がるのだろう、何やら後で「オジキの仇ぃいい」とか叫んでいるが気にしない。
オジキとは誰なのか。
入渓後最初の大岩、川の水深は変わらず低いので左からの巻きでは無くてショートカット出来る右側の小岩を歩いて渡るのが良いだろう。
後では相棒が「力こそパワー」と繰り返し咆哮しているが気にしない。
※ 2014年の記録的な大雪の影響で左岸が大崩落を起こし、この場所の地形が大幅に変わりました。現在この岩を超えるルートは消滅し、左岸の崩落箇所から巻く様な行程に成ります。
撮影しながらユックリ歩いて20分程、涸れ沢化してるが降水量不足の為だ。普段はもう少し流れが在る、この辺は玉砂利で足を取られ易いので注意して欲しい。
砂利の上を歩く場合はソリッドなガレ砂利とバラバラの大きさと形の浮砂利、足場が不安定な玉砂利など沢山の砂利ロケーションを想定しなくては成らない。一番歩き辛いのは足場が不安定な玉砂利、しかし一番怪我が怖いのはソリッドなガレ砂利だろうか。
砂利場に関しても一概に説明出来ないのが何とも。
「で、ですよねー」(大声)
!?
相棒が突然口にした言葉だ、どうやら自然と対話しているらしい。
ところで。
冒頭でも書いた「本格的な沢歩き」が出来る梨沢だけれどそれは房総半島での事、全国的に見たら沢としての難易度は最低ランクだ。装備に関しては写真で解る通りの軽装、一応シャワークライム用のハーネス、リードやディッセンダー類は持参した。
それでも不安な場合はスリングや沢シューズ、ビレイヤーの装備を用意して行けば転ばぬ先の杖と成るだろう。滝を登攀する場合はソック系のシューズに履き替える事も安全性向上の要と成る、ソールが厚くて硬いトレッキング系シューズは登攀には向かない事(※2)を頭に入れておいて欲しい。
※2:ガレ場や砂利場ではトレッキングシューズは抜群の歩き易さなので勘違いしない様に。
やっとこさで沢らしく成って来た、ヒルも居ないしホントこの場所は素敵だ。
※ 梨沢には現在(2013年現在)ヒルは確認されていません、安心して遡行出来ます。
(^ω^)この一瞬を君と生きるっ!パシャ
どうやら撮影の掛け声の様だ、相棒の引き出しが多過ぎて対応に困ってきた。そして写真を確認すると心なしか相棒の周囲だけ光って見えるのだけれど…。
(^ω^)この一瞬を君と生きるっ!パシャ
(^ω^)この一瞬を君と生きるっ!パシャ
(^ω^)この一瞬を君と生きるっ!パシャ
七ッ釜渓谷前半の幾つか在る見所の1つ、七ッ釜渓谷の「岩堰」だ、去年はココで弟子(2*歳♀)を撮影してレポート導入部分の画像として使用した。中々と「画」に成る場所なので覚えておいて損は無い筈だ、岩堰の手前は少々水深が在るので足元には気をつけて。
(^ω^)この一瞬を君と生き「うるせぇ」
今年もこの場所、うーん毎回思うけど本当にココが房総かと思う程美しい。弟子(2*歳♀)も自然とポーズを決める、本人曰く「ツクダオリジナルの構え」だそうで。
鹿やキョンと見られる足跡は確認出来るもののヒルに関しては一向に心配が無い、昨年もそうだったがこの場所に関してはヒルの心配は無さそうだ。
野生動物の遭遇に関しても危険なのはイノシシかニャンピョウ位だろう、愛用する剣から繰り出される”地球剣愛国富士山落とし”も破壊力に定評が。
いやね、バ・ソリーもバソリーも両方好きなんですよ。
七ッ釜渓谷の岩堰を越えると暫くと沢らしい風景が続く、沢幅も広くて歩き易い。
梨沢不動滝手前のゴルジュに到着。
このゴルジュの手前は腰まで浸かる程深い段差の溜池部分が在る、のだけど…今年はどうやら冒頭で記載した様に降雨量が少ない為がとても浅い。深い所でも50センチ位だったので予想以上に濡れる事が無くて良かった、この滝の手前には巻きルート(※3)も用意されているので登攀に自信が無い方は其方を歩いても良いだろう。
※3:このゴルジュ両岸からも巻く事が可能ですがロープスキルと多少の登攀技術が必要です
房総半島では余り見る事の無いゴルジュの廊下、先に見えて来たのが梨沢不動滝だ。うーむ…ココからでも解るぞ、今年は流水量が段違いに少ない。
これじゃただの岩場の登攀じゃないかぁ…。
入渓直後から懸念していた事態に陥った、やはりチョロ水でしたか。
早速岩場の確認をするとステップやフック出来るポイントはナメてない、これなら少しはリードクライムの練習として自由に昇降させる事が出来そうだ。しかし滝周辺は非常にナメていてウッカリすると滑って転ぶので留意して歩いて欲しい。
ナメに対しては沢シューズが最適なので興味の在る方は是非試して下さいまし、と言っても沢事態が実に多くの表情を持っているので一番重点を置くルートやポイントに適合したシューズやブーツを選択するのが何より一番心掛ける事だったりします。
まずは弟子(2*歳♀)にフリーで右側の直登を指示、上手く登れたら”MX-101”と”描きくけコン”を買ってあげよう。ってか1チップMSX売らなきゃ良かった…、ザナックやりてぇ、エッガーランドやりてぇ、SCC音源でグラ2やりてぇよぉ→。
滝自体が低い所為かこう…なんて言うか迫力が出ない絵と言うか。聞く所によるとこの梨沢不動滝に慣れている方はスルスルと右側を直登するのだとか、その内やりましょうか。
しかし本日はもう少し緩い左側を練習の場として活用させて頂きます。
※ 水量が少ない時期ならば直登可能です、が岩場なので登る場合はセルフビレイをお願いします。
リード設置の為にいつもの相棒が登攀開始、数秒で登り終える。まあそりゃそうか、低いもの。
「コピーは三田ぁあっ」
難易度が低すぎる為の”不満の叫び”である。そう怒るな相棒よ、今年は東沢渓谷とウメコバ沢でそのストレスを解消させてあげるから。
石舟沢鍾乳洞のエントリーでも書いたのだけれどリード(ロープ、ザイルの意)には沢山の種類が在る、材質や特性を基本に太さや柔らかさを必要に応じて使い分けて頂きたい。今回は石舟沢の時と同じカーンマントルロープ、耐摩耗性に優れロープ強度はガチですが何せ重いのが難点。
折角ロープを垂らしたのに一向に登ろうとしない弟子(2*歳♀)に「④ねぇええっ」の掛け声と共にカツ(流木)を入れる、その後も元気なので大事無い様だ。
トップビレイを確保、ロープを緩くしてフリーで登れるか経験させてみると以外と登ってゆく。ステップの見切り、バイトの初見と実際の掴み、その他体制や重心の基本的なレクチャーをすると理解したらしい。
ララァは賢いな
思えば今までも少しづつだがロープワークに関しては経験させて来た、過去のエントリーでは
などで簡単な場所ながら実践を踏んで来ている、今年からはそろそろ本格的なリードクライムを経験させても良いかもしれない。
ステップポイントの要点やガチカチの種類や掴み方などを教えながら一緒に登る、その後追い越して上部で相棒とビレイを交換してテンションが掛かった状態の昇降を体感してもらった。
ホントは流水量が多い時にシャワークライムの基本としての動き等を教えたかったのだけどなぁ、まあ仕方ない。また別の機会にして今回はリードに関してのレクチャーを進めようか。
ロープにテンションが掛かると自重が楽に成る分身動きの自由度がどうしても下がる、フリーとの違いや差を実際に身体で覚えてこそ多種多様なクライムに対応出来る様に成るのだ。
※ 写真のビレイ方法は大変危険です、あくまで補助的な物で通常ならば支点確保の上でお願いします。
さて、この梨沢不動滝からは更に30分程ナメ底の沢を歩くと七ッ釜の所以である七ッ釜渓谷の「七ッ釜」が顔を出す。七ッ釜とは大小分かれた多様なポットホールで前後に房総では珍しい廊下状の低いゴルジュも見る事が出来る、”間滝”程険しくないので難しく考えずに歩ける筈だ。
近年では2011年の大雨で流木が七ッ釜を堰き止めてしまい、溜池の様に状態で釜を土砂などで埋没させてしまっている。勿論見所として有名だったボルダーな「へつり」も姿を隠してしまっている状態(※4)だ。言ってみればこれが「滝で引き返す」理由だったりもします、遡行時間節約の問題も在って現状では滝でリターンアプローチした方が他にも物件を回れて有意義かと思いますし。
※4:2014年にへつりと釜の復活を確認しました
以上で梨沢七ッ釜渓谷のレクチャーレポートは終了です、沢歩きの季節としても最適な時期なのでこれから始められる方は最小限の装備を用意して是非全国各地に在る沢へ足を伸ばしてみては如何でしょうか。
因みに千葉県近郊の方ではこの沢は本当にオススメです、ヒルも居ないし危険な場所も少ないしでビギナーには安心して歩ける入門用の沢遡行が楽しめる筈です。
さて、ここからは周辺の情報と言うかそんな話を幾つか。
車のデポ地として良く利用される梨沢公民館の駐車場、この敷地内に残されている特長的な建造物は勿論その名の通り「梨沢公民館」だ。随分と古い建物で一見すると廃墟かもと思われるかもしれない、しかしその実態は富津市に25箇所在る選挙の投票所の1つ。つまりは現役で使われている公的施設、なのだけれど何と言うか…うーん。これ、どうにも学校に見えるんだよなぁ。
アチコチの廃校を見て来てやはり気に成るその風貌、帰宅後に机上調査すると大当たり、その昔「天神山小学校梨沢分教場」として使用されていた建造物でした。歴史を遡れば1873年から続く現役の学校の分校だった事が判明、この分教場自体は1971年に廃校と成っています。本校の校歴がウェブ上に在ったのでリンクをば。
天神山小学校の主な歴史
http://www.futtu.jp/syo-tenjin/enkaku.html
廃墟好きな方も少しは興味を持って頂ければ幸いです…が、中を撮影する事は勿論出来ませんし現役の公的施設なので邂逅出来る様な雰囲気でも無い事を追記しておきましょう。
その他にも付近には林道野郎にも知られた支線が数本在ります、酷道とまではいきませんが路面状態が「あ、これトラ車でくりゃー面白いのになぁ…」って箇所が幾つか。普段から林道を走りなれていれば心配は在りません。この辺で一番有名な林道東奥野線は車種は限定されるけれども車でも走破出来るので興味の在る方は自己責任にて。
確かな満足を得たいスニッカーな廃村好きならば梨沢から3キロ程南に走ると釜ノ台集落跡などの見所も在ります、廃集落ですが一部現役稼動の施設が在りますので留意して下さいまし。
梨沢の七ッ釜渓谷には登山道も幾つか在るので終点地点から更に山道に入るのもアリですよ、沢屋なら気付くかもしれませんが梨沢不動滝までにも3本(ガリーと混同しない様に)、越えてからも数本の枝が散見出来てロープが在れば歩く事も可能です。枝の1つ「滝の迂回路」は大してガレてないので多少のマディを我慢出来れば歩き易いですがその分退屈な時間を費やす事に成る事は承知して下さい、この迂回路はロープ等は必要在りません。
個人的心情から地図リンクは不掲載です。
アプローチ
秘境及び廃墟物件は自然保護と建造物保護の為に不掲載としています、申し訳御座いません。
地図リンク
秘境及び廃墟物件は自然保護と建造物保護の為に不掲載としています、申し訳御座いません。
本日は以上です。
photograph - nee
ここから下はブログ内容と一切関係ないブログサービスの広告スペースです、誤ったクリックなどにご注意下さい