千葉県│正木温泉(正木まるに温泉)
風力発電の風車って電気で回してるんだってよ…。
衝撃的な事実を前に力なく地に伏せた我々が心身の癒しに訪れたのは房総半島は館山の正木温泉、温泉地って以前はバイクで行ってたのですが文明の利器に溺れ、年齢も重ねると寝るだけでも疲れる程に。ともなればバイクの運転はもとより車でさえ断腸の思いで乗り込む訳でして、そんな自宅においてもパーフェクト帰りたい状態の行ってみた一同が感動したこの温泉を少しばかりですがご紹介させて頂きましょう。
早朝登山から下山し、遅い昼食を「ばんや」を仕掛けた保田漁港の元組合長が2014年にオープンしたと言う「栄丸」で食し、海老の天ぷらを食べながら「これは蟹かもわからんね」などと
はい。
来訪したのは房総半島でも優れた泉質として知られる正木温泉だ。実は個人的には以前にも来た事があるのだけれど行ってみたとしては初めて。相変わらずの大音量で来る者を驚かすテレビ音声と耳が少々(凄く)遠いおじいちゃんは健在でした、それにしても猫が一杯。
さて。
正木温泉は半世紀前にこのおじいちゃんが源泉地を発見した事から歴史は始まります、その後個人的に温泉を経営してましたが約45年程前(2017年現在)に正式な温泉として行政に登録する為に泉質調査などを行い、その後1年程掛けて認可が降りました。
当初は個人宅への温泉の配送販売も行っていましたが2年と経たずに中止して現在の家屋を改造した寄り湯へ一本化し、温泉フリークの方々の口コミで認知度が拡散していきました。雑誌やウェブ媒体、テレビなどでも紹介されているのでご存知の方も多いかもしれません。
因みに定期的な泉質調査も行っていて一番新しい調査は2015、有効含有物質の大きな増減は確認できないので安定した湧出地と言えよう。因みに今回この湧出地にもお邪魔したのでその現場は後程写真でお見せしたいと思う。
世界観が独特過ぎる
一歩中へ足を踏み入れると初めての人には驚く事が多いと思う、よく見て欲しい。左の壁も右の壁も、そうなのだ…外壁なんです。つまり、今僕らが歩いているのは家と家の間の”外”だった場所。これ、正面左側のトイレゾーンも含めると3棟の家屋を波板とトタンで無理矢理結合したちょっとしたトンデモ建造物だったりします。
開業当時はここまで酷く(ユーザビリティに配慮した)はなかったのだけど年々増改築を進める内に現在の形状に収まった様だ、しかし意外と用意するものはシッカリと用意した様で看板や配達用のトラックの塗装、地区内の案内図設置、行政関連施設へプリントの配布など”認可を取得したのならば温泉施設として広く知ってもらいたい”と広報活動も活発に行ったと聞いた。
が、近年はスッカリと客足は減少。農業も年齢的にキツイそうでどうにか温泉施設としてのメジャー化を図りたいとお話されていました。
正木温泉の特徴としてまず目に付くのがこの手書きの注意書き、至る所に設置されていて全部を読もうと思うと明らかに入浴時間より長くなりそうです。
この正木温泉、実は公式な温泉の届けを出す為に泉質調査を行ったものの詳細な泉質分析は近年まで行っておらず、「どんなモンが入ってるか良く解らんが兎に角効く」と噂されていた。定期的な泉質調査はあくまで衛生上の調査であった為に細かな成分分析は2006年までは行われていなかったのだ。
分析を担当したのは「千葉県衛生研究所」、行政内部署ですね。
千葉県衛生研究所
https://www.pref.chiba.lg.jp/eiken/
千葉県衛生研究所の温泉分析書によれば主成分は
・含硫黄
・ナトリウム炭酸水素塩泉
・塩化物泉
冷鉱泉(源泉温度は17℃前後)で淡黄褐色澄明の無臭とある。温泉に興味がない人には蛇足なのだけれど房総半島にはこの泉質に酷似した泉質を持つ温泉が散見出来る。有名な所では養老渓谷や成田近郊の温泉だろう、因みにこの茶褐色の色の原因…皆さんご存知だろうか。
有色温泉で濃茶褐色(温泉的には黒色と表現される)の場合、その源泉は浅い場合が多い。山中の地下より湧出する温泉は多分の腐葉土を含んでいて地上に達するまでの間に自然のフィルターで濾過される事になるのだけど湧出場所が地上から浅いと濾過する距離が短くなり、結果として腐葉土などの濾過仕切れなかった色が残ってしまうと言う訳だ。
一応誤解が無い様に追記するけれど腐葉土とは便宜上の言葉で正確には腐植質の地層の地中成分、そして色を決定付けるのは含有成分のフミン酸のコロイド粒子の量や大きさだ。更に含鉄泉なんかの話を織り交ぜると長くなるので興味がある方は各々調べて頂きたい。
この素敵な正木温泉において一つだけ気になる事がある、それは殺菌方法だ。
施設内の注意書きには「60℃~70℃の高温で殺菌している」との一文が見て取れる、が。不特定多数の人が入浴する温泉において高温殺菌は90℃以上でないと本質的な意味がない、また通常の塩素系薬剤による殺菌もフミン酸が多く含まれている事が伺えるこの淡黄褐色の湯質には不向きだ(フミン酸が多い場合は結合塩素が生成され、殺菌効果が減少する )。
確かに1999年に制定された感染症新法の方針書には「加熱殺菌法」として「循環する浴槽水を60度以上に加熱して殺菌する」と有るが正木温泉は3日に一度湯を交換する汲み置きだ、それに泉質の分析書を見てもph値は僅かな上下はあるものの7なので丁度中性であり、草津温泉の様な強い酸性による殺菌は望めない。循環であれば70℃は十分な殺菌効果を謳えるが汲み置きの場合は更に20度以上の高温が必要とされる、雰囲気はその間々に安全性を向上しなければ更なる集客は現代において難しいのかもしれない。
ともなれば。
この温泉に必要な殺菌方法は「銀イオン」による還元性殺菌位だろう、濃い有色湯なので紫外線殺菌も無理なのが残念な所だ。
銀イオン殺菌装置
http://www.japan-ion.com/silver/bath.html
是非この手の殺菌装置を導入してほしいところ、先程さらっと書いたが3日に一度の湯交換はやはりちょっと怖いですよねぇ…いや、正直な話。
少々ネガティブな要素を書き連ねたけれどあくまで好きの裏返し、この温泉の素晴らしさはやはり建造物を含めたその温泉そのものにあります。
建物置くの浴室に入ると湯が冷めない様に対策がされている事が解ります、また汲み置きの為に掛け湯も禁止で水などで薄める事も禁じ手です。シャワーで十分に身体の汗を流してから浸かりましょう。
それにしてもこの淫靡な雰囲気がソソリますねぇ、光の取り入れ口となる窓はその昔おじいちゃんが自作した物で施設内の改造もアーキテクトとして尽力された様です。
浴室内はこんな感じです、今度は夜に来たくなる雰囲気。
リコーのシータアップロードサイトへ移動(ブランク)します、PCからならマウスのジェスチャーコントロール、モバイルの方も同様ですがVR系アプリがインストールされている場合はジャイロが良い働きをしてくれます。
全員が別々に湯を楽しんだ後、縁側にて雑談してこの温泉に関する歴史や経緯、周辺の移り変わりなどの話を聞かせて頂きました。途中からおばあちゃんも加わり、過去にテレビ取材を受けた時の写真を見せて貰ったりと楽しい一時を過ごしてそろそろ帰ろうかと言う時間。
「あのー、源泉湧出地を見たいのですが」
北海道や離島では温泉に行くと必ず湧出地も見聞してたので駄目元でお伺いをたてると…
「こっから1キロ先の山の中、行ってきな(そんなん見たいんか、変なヤツ…)」
「マジかジジイ、ええヤツやな(有難う御座います!)」
と快諾。興奮の余り建前と本音が逆になったが耳が遠い事が幸いし、場所を公開しない約束で正木温泉の源泉湧出地を見せて頂きました。
地味だった。
車でノロノロと山道を走り、少しばかり歩くとそこには温泉ステーションが。ここへ3日に一度タンクに温泉を汲みに来ているのだと言う。写真奥が旧汲み上げポンプとホース、手前の屋根付きが現在使用している新しいモーターを利用した汲み上げポンプだ。
1973年、この認可を取るのに随分と苦労したそうだ。申請時に行政の方と大喧嘩したとも聞いた、現在では歴史を語るに等しい年月を経た温泉の源泉湧出地と成った。
余談だけど泉質調査はこの源泉と運営されている家屋の2箇所でそれぞれ行われている、温泉法で取り決めで汲み置きの温泉や源泉から遠方の場合は少々認可まで難儀するとの事だ。
小型のモーターを利用した汲み上げポンプ、塩ビパイプや掃除機用のジャバラホースなどアットホーム(?)な風体だ。
そうそう、良くこの正木温泉が紹介される時にみる家屋正面入口の写真でも目立つマーク「マルニ」ロゴ・この写真でも「正木(マルニ)温泉」と確認出来るだろう。これ、ピンと来る方も居る筈…そうです、引両紋で御座います。
引両紋 - ウィキペディア
https://goo.gl/6B2MCa
中でも「丸に二つ引」と呼ばれる家紋でしてご存知の方も当然多い筈、そんな足利将軍家の家紋と正木温泉の以外な関係性…
は特にありません。
おじいちゃんに、
「あの家紋を掲示しているのはどの様な意味があるんですか?」
「あー↑?ありゃウチの猫じゃねぇ」
謎は謎の間々の方がお宜しいのかもしれません、歴史の禁忌に触れたい気もしますがもう少しだけ人生を楽しみたいので
「ああそうなんですか、かわいいですね」
と大人の対応で質疑終了と成りました。
新しいポンプ、毎秒3トン(※1)を汲み上げるのだとか。
※1:だったらいいなぁ(遠い眼)
掘削機がマントル遷移層に達した(※2)事で使用が禁じられた初号機、HAARP試作機との噂も。
※2:だったらいいなぁあっ(半ギレ)
正木温泉
正式名称は「まさきまるにおんせん」、正木温泉は源泉名で施設としての名称は正木まるに温泉です。とても素敵で行けば必ず魅了されるこの温泉、是非一度は浸かって頂きたいオススメの湯です。
・源泉名称:正木温泉
・施設名称:正木まるに温泉
・所在住所:千葉県館山市正木3027(0470-27-4614)
・入浴料金:650円~
・営業時間:09:00~21:00(年中無休)
この正木温泉にとても類似した温泉が東京湾の対岸にありました、その名を「星山温泉」。恐らく”廃度”は星山温泉の方が上ですが残念な事に近年閉鎖されてしまいました、最後にもう一度行くべき温泉だったのに…参考サイトは以下よりどうぞ。
迷走局 - 廃墟のような貸切温泉!星山温泉に入浴
https://www.wander-dept.net/article/15_hoshiyama_spa/hoshiyama_spa.html
アプローチ
国道127号線から正木地区への枝は数本、田園地区ゆえにどの道も正規ルートと言える物は無いので地図を参考に現地へ赴いて欲しい。
地図リンク
https://goo.gl/maps/dfqUhcD21CJ2
写真撮影:6Frogs Design Works
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