栃木県│白雲瀧
滅びの美学 [ 廃墟・廃屋・遺跡・廃村・廃道 ] 探索 - 白雲瀧(白雲の滝/華厳渓谷/鵲橋/五郎平茶屋滝壺道/華厳瀧壺道)
※ 2014年に中宮祠下水処理センターの排水口付近の崩落とアプローチルート壁面の崩落が発生した為に来訪は非常に危険です。またこの崩落箇所の上部壁面が新たな崩落を予測される横亀裂を起こしています、絶対に類似行動は控えて下さい。
※ 2017年08月、アプローチルートは崩落が進んで非常に危険な状態です。
約6年間に渡り、現地調査してきた「白雲瀧」。その大部分は白雲瀧の周辺の地形や地質、そして五郎平茶屋滝壺道を経て鵲橋へ至るまでの厳しい廃道状況の報告を行ってきた。
前回(2016年)は恐らく未踏の地であった念願の白雲瀧の対岸へ赴き、その危険な地形をお見せ出来たと自負しているのだけれど今回はスッカリと行く事のなくなった鵲橋へ再び行ってみようと言う事に。
5年間行かずの廃橋へ、現在の鵲橋は一体どうなっているのだろう。果たして橋へ辿り着く事が出来たのか、白雲瀧再訪レポートの最終回となる「白雲瀧」3回目のエントリーを早速始めましょう。
過去2回のエントリー(来訪は毎年なので追加エントリーが複数有り)
※ 説明簡略化の為、上記レポート(初来訪以降のエントリー)を読んだ上でお楽しみ下さい。
今回は「行ってみた」のメンバーがかなり揃いました、海外組と仕事組を除き総勢6名でのアタックは同行人数としては過去最高です。それ故に危険な現地での移動時間は予想を大きく上回り、安全対策もそれだけ慎重にならざるを得ません。
今回で白雲瀧は最後の来訪となる予定です(別の華厳渓谷来訪で同じルートを通りますが単発物件としては最後と成ります)、なのでまだ連れて来た事の無いメンバーに是非この美しい風景を見せたかったと言う思いもありました。
しかし大人数ってのは予定を合わせるのが大変でして、当日は7名の予定が仕事で1人減っての6人に。それでも既述の通りの過去最高参加人数、忘年会位ですよ…全員揃うのは。
時間:0750
標高:1214m
天温:曇/14℃
※ オンマウス(ロールオーバーで画像が切り替わります)
アプローチを割愛してサクッと最初にして最大の核心部分、下水処理場から放出される処理水の滝を降下します。この場所、震災後の2011年、2012年と来訪に問題は無かったのですが2013年頃から処理水出口のパイプ付近が徐々に崩落。しかもその周辺も規模は小さいものの土砂崩れをを起こしてしまい危険な状態に成りました、更に悪い事は続くもので2014年の記録的豪雪時にはこの一体が大きく崩落。そしてトドメは翌年2015年の連続台風による大規模土砂崩れでした、下方は120メートルの断崖絶壁。
(この状況を写真をオンマウスにして再度確認して下さい)
岩肌は水流によって滑り易く、そもそも脆い岩質でバイトできる場所も意外と少ない。と、言うのもこの辺の岩は板状の崩落岩が重なる様に堆積していて何処も彼処もグラグラと動く。結果、身体を預ける事が出来るホールドが大して無い中で移動しなくては成らない。
斜め下に下る様なトラバース、そして崩落しそうな場所(赤円)も注意深く観察しながら互いに声を掛けながら進む。トップはロープを固定出来る箇所を幾つか見つけ、そして後続は無線連絡でその状況を判断。
上級者が初心者を挟む様にゆっくりと進むので通常は5分程で通過する所を30分以上掛けて進むのだ。
注意点:岩に身体を預けず、足場を確保してゆっくり進む。
注意点:ノーロープはリスクが大きいので”行ける”と思っても必ず設置する
photograph:+10
時間:0830
標高:1199m
天温:曇/14℃
※ オンマウス(ロールオーバーで画像が切り替わります)
写真には5人が連なっている事が解るだろう、最初の写真の一番奥の箇所から写真を撮影しているのだけれどこの場所。
実は草木で隠れているが近年大規模な崩落が発生した所、その為根の張った樹木や茎の太い雑草は殆どないので慎重に進まなければ成らない。
ズリっと行くとゴロっと逝く。
オンマウスだと解り易いだろう、この様なルートを最初に設置したロープを頼りに手前方向へ降下する。山経験の少ない者はルーファン次第では「死」もあり得るのだ、これは大袈裟でもない表現でもしそれでも現地に赴きたい方は熟練者同伴の下で潤沢な装備を用意して頂きたい。
※ 何度も書きますがこのルートを通過するのはオススメ出来ません。
注意点:ここでもロープは必須
注意点:冬季は地面が見えているが下記は草木で見えないので留意して降下する
注意点:親綱にはスリング+フリクションノットでセルフビレイを徹底
時間:0850
標高:1184m
天温:晴/17℃
核心部分は抜けて一安心、ここからは若干緩くはありますがギリギリ2本足で降下出来る斜面を一気に下ります。
この場所も以前はもう少し緩やかな傾斜だったのだけれど上部の土砂崩れと時を同じくして2015年位からキツク成って来た、そう遠くない未来にロープで降下する時が来るだろう。
因みに20メートル程降下して左へ大きく迂回すると以前までは鵲橋へ至る獣道が薄っすらと残っていた、今回確認したがその形跡は途中から崩落の為に消滅しており、別ルートを開拓しなければ成らなかった。
やや右方向へ下るとお目当ての白雲瀧だ。
注意点:前傾姿勢を避けて斜めのスタンスを維持する
photograph:+10
時間:0910
標高:1170m
天温:晴/18℃
白雲瀧が初めてのメンバーも含めて全員で一休み、ここまでで既に1時間。これが2011年であれば10~15分で単独踏破出来た(※1)、それだけ短時間で地形の変化が大きかったと言う事だ。
しかし美しい、この場所は本当に美しいのだ。
※1:白雲瀧最初のエントリー(https://ameblo.jp/6blogs/entry-10967902432.html)参照
時間:0950
標高:1170m
天温:晴/19℃
一折この絶景を楽しんで頂けた様だ、それでは本日もう一つの目的地である「鵲橋」へ向かう事にしよう。
先行隊には緊急時用のロープと登攀器具、そして通常のロープをパッキング。この様に状況に応じて共有アイテムを現地でリパッキングする事も度々ある、マッシャー用のショートロープと安全確保用のスリング、そして要救助者引き上げ時必要な倍力システムのお浚い…足場が悪くて危険な斜面では必要とされる道具と知識は多い。
注意点:以降、要救助者への救護措置の知識と救助行動の知識が必須と成ります。
時間:1020
標高:1177m
天温:晴/19℃
以前までは鼻歌交じりに踏破出来た獣道(旧・五郎平茶屋滝壺道+1980年代に釣人が開拓した華厳渓谷への複合道)、現在はこの様にキツイ斜面が広がっていた。オンマウスでなら確認出来るが薄っすらと道筋を辿る事も可能だが途中でガリーに突き当たり、結局その地点(ポイントアイコン)からロープで降下する事にした。
※ 赤丸は先行者がロープで降下しているところ
この道筋は本来なら「五郎平茶屋滝壺道」と呼ばれた華厳の滝へ至る野良の観光道だった、華厳の滝の観瀑エレベーターは1930年に完成しているので滝壺手前で1937年まで営業していた五郎平茶屋へは既にこの道ではなくてエレベーターを利用していた筈。
そう考えるなら90年近くの間”道”として残っていた事に成る、ならばこの状況は意外と酷くは無いのだろう…か。
この辺に関しては過去2回のエントリーを参照して欲しい。
しかし一世紀前にはこの道を通って華厳の滝の滝壺へ行けて、しかも滝壺前に茶屋が在ったとか…現在からはどうにも想像出来ないなぁ。
注意点:下方は樹木が多いので滑落しても下までは落ちないが傾斜はキツイ
photograph:+10
時間:1100
標高:1163m
天温:曇/21℃
この写真、なーんかオカシクないですか(オンマウスで本来の状況へ)。
そう、降下途中で小さな平地(幅30センチ程)を見付けたので皆(後発隊)で休憩中なのです。先発隊は華厳渓谷まで降下するも鵲橋までの道筋が見付けられず上り返しの最中だったりします、この辺りは倒木も多くてバイト出来る岩も少なく、斜面はズルズルで本当に苦労します。
暫くして先発隊と合流、新たにルーファンしてガリーを越えた場所に降下出来そうな場所を発見しました。
いよいよ6年振りの鵲橋さんです。
photograph:+10
時間:1140
標高:1151m
天温:曇/21℃
30メートル+20メートルのロープを使って約40メートルの斜面を降下します、2011年頃はまではこの少し手前から岩場を利用して下まで行けたのですが現在は崩落の為に敢えて堆積物の少ないガリーを降下する事を選んだのでした。
注意点:浮ガレなので下方に人が居ない事を無線で確認しながら降下
注意点:上り返しを考慮して降下ルートを決定
時間:1140
標高:1142m
天温:曇/21℃
到着やー
いやぁ大変だったけどやっとこ来れたよ鵲橋さん、年齢の所為なのかビビりに成ったのか、本当に崩落が進んだのか…様々な不安要素を乗り越えて本当に苦労して辿り着いたですよ。
橋自体の劣化はそこまで進んでないけれど人が渡らない(※2)この廃橋は今や自然造形の一つとさえ見えてくる、そんじゃ記念撮影するですよー。
※2:実際は河川管理の為に日光土木事務所と古河日光発電馬道発電所の各職員が往来する
photograph:+10
時間:1210
標高:1138m
天温:曇/22℃
リコーのシータアップロードサイトへ移動(ブランク)します、PCからならマウスのジェスチャーコントロール、モバイルの方も同様ですがVR系アプリがインストールされている場合はジャイロが良い働きをしてくれます。
恐らくは近年で鵲橋に一番人が滞留(6人)していると思われる写真、賑やかです。
さて、ここで本日の今後の行動について考える。時間的にこの人数で対岸へアプローチするのは少々危険だ、なので少しでもその雰囲気を楽しんで貰う為に白雲瀧の渡河だけでもやってみようか。幸い水量が多くても最上流の中島は足場がシッカリしている、ロープさえ設置すれば滑落の心配は無いだろう。
十分な休憩と撮影時間を取り、パッキングを済ませて上り返しの準備を進める。
時間:1230
標高:1129m
天温:曇/21℃
一方撮影班は華厳渓谷まで至らずとも鵲橋の下方まで降りてカメラを構えていた、しかし昼前から急激に天候が悪くなって来ており、偶に小雨がパラつく天候状況では折角の美しいこの風景が綺麗に切り取れない様だ。
集合を掛けて橋まで戻って貰い、上り返しを開始。
注意点:ロープ回収は危険を伴うので同伴を1人つける
注意点:水に濡れたロープは重いので複数人で分担してパッキング
2018年の計画になるがここから更に華厳渓谷を下り、ちょっとアレしてきます。本当は2017年09月に計画してたんだけれども天候が芳しくなくて延期になりました。
photograph:+10
時間:1320
標高:1163m
天温:曇/19℃
戻ってきましたやで。
いつも通りの行程だけれど初めて組にはこの降下は中々迫力があると思う、滝壺に向かってギリギリまで攻める事が出来るこの場所は白雲瀧にあっても非常に特別な風景を見せてくれるのです。
小雨が降った所為か午前中より若干水量が増えています、と言う事は地下で繋がる最上流部の男体山ではもう少し激しい雨が降っているのかもしれないな…これは余り長居せずに早めに切り上げた方が良さそうだ。
安全を考慮して3人づつ降下、2人入れ替えを繰り返して最後に上級者がロープを回収した。
注意点:目の前が段瀑の最高低差の場所なので水流に注意する
注意点:崩落箇所が点在するので足元に注して歩く
photograph:+10
時間:1400
標高:1163m
天温:曇/19℃
今回で最後とした白雲瀧、その理由は最初の来訪時の感動を余り薄めたくないと言う気持ちと単純に年々来訪が難しくなって来た崩落に起因している。そして「行ってみた」としても知りたい事は十分知れたし現地で楽しむ事も出来た事で満足していると言うのが特に大きな思いだ。
今後、どうにか安全が確保出来る状況でこの先の華厳渓谷へ何度か来訪する事に成るけれど白雲瀧では是非足を止めてご挨拶位はしたいと思う。
6年に及ぶ調査で廃道の歴史と現在の状況、そして白雲瀧発見へ至るプロセス、美しい自然との邂逅…それぞれが本当に山屋を楽しませてくれる要素で一杯だった。こんな綺麗な場所が日本に在ったんだと、何度も再確認させてくれた思い出の場所にも成りました。
恐らく、このレポートを読んでも「それでも白雲瀧に行ってみたい」とおっしゃる方は沢山居ると思う。エントリーの中で鬱陶しい位に危険を促してきたけれど一度啓発された気持ちは中々と治まりが効かないものだ、であるならば。
どうか安全に関しては十二分な準備を、そしてどうか熟練者の同伴を。
行った結果それが簡単だと思えても天候一つで、注意不足一つで美しい自然はガラっとその表情を変えてきます。コレが本当に怖い、こんな事ばかり書いてはいるけれど約束出来る事もあります。
この場所は本当に綺麗で、そして美しいです。
これにて白雲瀧のレポートは終了です、今度は華厳渓谷のレポートでちょっとだけお目に掛かるかもしれません。その時はほんの少しですが白雲瀧さんをお見せ出来ればと思います。
本日は以上です。
アプローチ
中禅寺湖T字路から国道120号線下り方面(いろは下り)のみとなる分岐部分、手前のガソリンスタンドが目印。石碑は道路から比較的発見し易いので入口は間違わないと思います。
写真撮影:6Frogs Design Works
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