千葉県│湊川水系本村川源流 - 再調査
滅びの美学 [ 廃墟・廃屋・遺跡・廃村・廃道 ] 探索 - 湊川水系本村川源流
糖尿対策を視野に入れた生活を心掛けたいと感じる昨今、成人病のシャドウに怯えてながら極細なISDN回線でプリン体について調べます。蓄積疲労には自信が漲るマイノリティなメンバーが本日も素敵な秋の夜を演出、今宵もサンポールのギターを掻き鳴らしながら頭がハッピーセットでお付き合い頂きましょうか(引き返すなら今です)。
きゅうりのQちゃんを齧る音だけがロードノイズと共に響く非常に重苦しい空気の車内、そんな男3人組が向かったのは依然も歴史調査と地形検証で来訪した事がある房総の最終兵器「本村川源流帯」です。
今回のエントリー、まずは最初の調査レポートを是非お読み頂いた上でご覧頂きたいと思います。
前回2回に分けてレポートしたこの本村川源流、房総半島とは思えない素晴らしい景観と複雑に入り組んだ踏破困難な地形が何かと手を焼かせる別件でした。当初予定していたゴルジュの上部へのルートを開拓出来ないまでも周辺地域の歴史と地形の検証を終え、幾ばくかの満足感は得られたものの…うーん。
やっぱり行きたいなぁ…あの場所へ。
あの場所とは前回の最終地点の涸れ滝の両泥岩質砂壁、上流から見て左壁は約30メートルのバーチカル。右壁は2箇所の小さなハングを形成する20メートルの緩やかな斜面、見る限りアプローチはかなりマッシブときてる。この両壁への到達と更なる地形調査、そして降下。これらが今回の目的と成っています、高所興奮症ですからねぇ。
…と思い出しながら熟考するも生来の忘れっぽさで記憶もほにゃほにゃしてるなぁ、外観和尚さま僕に力を貸して下さい。
ポクポクポクち~ん
網膜(8枚切り)に焼きついた記憶が蘇る、ここですよココ。前回断念したこの場所へ辿り着きたい、そして周囲の地形を確認しながら降下してみたいと。安国寺で修業した成果、今こそ魅せてやるです。
今回この計画に参加してくれたイカしたブラザー達は2015年1月から参加しているU田川君と今回が2回目の参加と成る新人のK田君、地形が入り組んでいて車のデポ地からのアプローチが若干険しいけれどロープワークさえ出来ていればレベル的に難しくは無い。なので新人のK田君には丁度良いスキルアップと思い、この場所を2回目の場所に提案。
2人とも普段からスポーツを欠かさないアスリートだから心配は無いだろう、後は経験をじっくりコトコト積むだけだ。それでは行きますか、クルクルなんとかヒヤヒヤドキッチょのm(※)
※ アニメパートはありません
藪った旧作業道から急斜面へとり付き、比較的楽に降下出来そうな場所を探します。余りに樹木が乱立している所為で来る度にアプローチルートが変わってしまうのだけれどまあ今回も適当に、ガリー脇の土砂崩れの痕跡を見付けてそこからロープを垂らします。拡張INT13を走らせた我々に「草の壁」など無いに等しい、えっへん(風邪気味)。
快晴の中スタートした今回の調査、最終的にエライ目に合うのですがそれは後程お話致しましょう。
[ GPSの感度の位置補足の精度を記載しています ]
電波感度:||||||||||
位置補足:誤差10m
天候状態:晴れ
茨城県と栃木県に甚大な被害を齎した2015年の台風17号+18号(※1)、その爪痕はこの本村川にも見る事が出来た。各所の落ち込み(2~3メートル)が以前より抉られて深く成っていたのだ。つまり、この涸沢に恐らくは雨水が流れ込んだと。枯渇した水源の変わりに集中豪雨が一時的にとは言え”流れ”を取り戻す手助けをしたとは少々複雑な気持ちに、それ程マディでも無いので注意しながら進みましょ。
※1:平成27年台風第18号 → https://goo.gl/AqaWu8
photograph:K田
また来たやで。
相変わらずの落ち込み、ここからグングン傾斜を強めて落ち込んでいきます。一番下までは40メートル位(※3)、余りに女子力が低い地形に流石の男性陣も苦笑い。
※3:この場所は非常に危険な地形です、装備と知識が無いと自力脱出不可能な場所へ滑落する可能性が高いので単独行は避けて下さい。と、言うかこの場所へ来るのは(経験豊富な経験者が同伴する以外は)オススメしません。
photograph:K田
前回は全くの圏外だったこの場所だが3人共携帯+GPSの電波を拾っている、流石に精度は悪いが天候が前回より良くないのに何故だろう…そう、そうなんです。あれだけ青い空を見せていたのに何時の間にか曇ってきてたんですよねぇ、良くない予感が背筋を伝うのが解ります。
新感覚っ
[ GPSの感度の位置補足の精度を記載しています ]
電波感度:||||||||||
位置補足:誤差20m
天候状態:曇り
美しい、確かに素晴らしい風景だ。しかし面倒臭い、既に帰りたい。
我ら心に灯す渾身の言葉あり「価値在る撤退」、さあ帰ろう。
( ´・ω・)ピコ ☆
(,,_u_つ―[]/
(´・ω・`)
あんたって人はぁっ!!(CV鈴村健一)と1人2役をこなして会場(?)を温めてはみたものの。同伴したお2人は
「え?これ登るの?」
「やだよ、面倒臭ぇ」
「それより卓球やろうぜ」
どこでやんだよ。
photograph:U田川
メンバーにリンチ(怒られた)ので嫌々ながら安全確認を行います、本当に面倒臭ぇ(大声)。
10メートル程の涸れ滝を降下、周囲にフィクス出来るポイントが無いのでやや上流のチョックストンからベースロープを取って降下用ロープとジョイント。登り返しのエッジで上がり易い様にステップラダーを設置、先行して自力登攀が初心者にも可能か検証してみた。
うん、大丈夫そうだ。
このロープが後々と背に聳える両壁のラぺから復帰する自力脱出ルートと成ります、元々は泥岩質ですが表面は砂壁で少ないテンションでポロポロと崩壊。こりゃ気を付けて昇降せんと、セーフティはしっかり取るんやで。
ここで参加者全員にこの涸れ滝のラぺとマッシャーでのロープ登攀を練習してもらおう、今後の山行でもきっと役に立つ経験に成る筈。
この場所に限らず脆い岩肌の場合、ロープでの昇降に関しても通常とは違う留意点が幾つか在ります。状況に依存したアドバイスに成るので詳細は割愛しますが経験豊富な同伴者を連なっての行動は元より、装備の使い方も変化します。
またフックやステップが見込めない場所ではマッシャーやクレムハイスト(プルージックの様な古式フリクションは絶対に使用してはいけません)も少々アレンジが必要に成る場合が在ります。倍力システムをソロで使う事も出来ますが基本は2人以上、そして1人は必ず状況判断が出来る熟練者を同伴させて下さい。
photograph:K田
恐らくバーチカルは2回目のU田川君、危なげ無く降下。流石にロープや身体の扱いにも慣れてきたご様子、続いて新人のK田君が降下。流石に怖いらしく少々身体が強張っているもののアドバイス通り降下を終える、それじゃ更に下流方面へ行きましょうか。
※ 当メンバーには初心者はハングを使用せずジワジワと降りる様にさせています、また初期においてはミスワークを踏まえて落下防止のマッシャーを徹底しています。
お空きれい(空が見えるとは言ってない)
10メートルの涸れ滝から小さなフロアを経て左に折れると8メートル程の涸れ滝が顔を出した、これは前回も考えたのだけど降下する手段が無い。と言うのもロープをフィクス出来る場所が全くと言ってないからだ、背の低い草木ばかりでロープ降下は不可能でフックもステップも切れない脆い壁面はフリー降下も許さない。
迂回路も無いのでココから下流に行く為には別のアプローチポイントから遡行するしか手が無い状況だ、壁面上部からのアプローチも考えたが途中の形状と隆々とした盛緑に遮られて初見ではルートを構築出来そうにも無い。
地図を見る限り湊川水系の無名の川が流れ込みゴルジュを形成していると推測され、この本村川と合流する筈だ。機会が在れば探索してみたいが今回は両壁のルート構築と周辺地形の調査を優先させたいと思う。
って事で全員でベースロープをフィクスした地点まで戻る事に、そこで改めて現地の状況を把握しながら調査を続けようと思う。しかし脚長えなてめー。
※ ロングのナイロンスリングで即席のチェストを用意、ボディ側とフットテープそれぞれにマッシャーを設置して交互にアセンド(登攀動作)を行います。これが出来ないと数メートルの落差も自力脱出不可能に成るので最初に覚えるロープワークの一つでも在ります、空中登攀は更にレベルが上がりますがその場合はガチャガチャ(登攀器具)を使用します。
因みにフリクションノットの基礎知識としては「ロープと小径マッシャー用ロープの径差」・「ロープに巻く回数」・「巻き終えの処理(例えばクレムハイストなど)」・「ロープの材質の相性」・「キンク状態」の5つを知る事です。ロープとしては良い状態とは言えないキンクを利用したジョイント方法なども在ったり中々奥が深いのがこの技術、これらは興味が在りましたら各々調べてみて下さい。
photograph:U田川
今回の目的の一つ、ゴルジュ上部へのルートを開拓して降下ポイントを見付ける…この過程で周囲の地形も把握して昔の航空写真などと比較した上でどの様に地形が変化したかを調査したいと考えていた。最初に現地で議論したのが上流から見て右側、約20メートルの右壁だ。
これ、実は降下ポイントまでは恐らく行けるのだけどどうにも壁の状態がお宜しくない。小規模ながらハングしている場所が2箇所、そして全面に茂った細い樹木。安全面を確保して考慮すると今回は新人2人を抱えてアタックする意味も無いと判断した、候補をシフトして左壁へのアプローチを検討開始。
此方側はどうか、実はココに至るまでの過程で斜面が薄い場所を既に発見していた。そして地元の植林業者から事前情報として植林時に使用した旧作業道が在る事を把握してもいたのだ、行政の地形調査で今でも年間2回程人が通る場所でもあるとの情報も入手。
うん、これなら旧作業道を経由してどうにかゴルジュの上部へ到達出来そうだ。
斜面の緩い場所から左岸に入る、がココで山間部では非常に恐ろしい(しかも入渓中は最悪の事態)事が起こる。先程から妙に暗いなぁと思ってはいた、そして先行調査人員として左岸にU田川君が入って数分後…
[ GPSの感度の位置補足の精度を記載しています ]
電波感度:||||||||||
位置補足:誤差20m
天候状態:曇り(降雨寸前)
この有様。
写真ではまだ明るく見えるけれど現地の状況としては夜かと思う位の真っ暗闇、こんなのは流石に経験した事も無い。そして嫌な予感は勿論的中する事に。
雨。
※ 涸れ沢なのでマディな状況以外は危険が無いが通常の沢なら緊急で離脱しなければ成らない状況です、踝位の水位が5分程で1000ミリを超える事も山間部では珍しく在りません。
丁度上方から、
「着きましたやでー」
とU田川君からの知らせ、うーん…雨の中でのラぺか。シャワークライムならそれなりの装備だけど今日は普通に山装備だからなぁ…っつう事でまずは地形がハッキリ判断出来る明るさに成るまで待機を指示、一応安全を考慮してシングルから制動力のより高いダブル(※4)に変更してフィクスだけしておく様に伝える。
※4:シングルロープは動きと変則的な動きに対応出来ます、通常はシングル。しかし高所や何かしらの理由で制動力が必要な状況の場合2本(ダブル)のロープでのラぺ行います、非常に強い制動力で熟練者からすると滑りが悪くてハングもし辛いのですが安心感は抜群です。ダブルにマッシャー(もしくはクレムハイスト)でフリクションを取ればまず落下する事は在りません(経験者限定)、ただアプローチ時のパッキング増量と引き換えでは在りますが。
山間部でただ待機とは何ともやるせない、しかしそこは経験豊富な我々である。こんな事もあろうかと1人1台メトロノームを持参していた、これさえ在れば暇潰しなど恐るるに足りない(下二段活用)。まずはCL自ら手本を見せる。
こうだ、解ったか。K田君から爽やかな笑顔で「いけそうです」と心強い回答、崖上のU田川君にも同様に伝えて「不安ですが頑張ります」との声。それじゃーイクぜ?。
うえーい、ヨコノリサイコー。首が引き千切れるまでオンザビート、お…おれのアトラスとアクシスが…夢の様な時間がドリーム、甘い陶酔感はクリーム、振り過ぎ骨折でスクリームぅううばばば。
そして翌日(10分位)…
暫くして小雨に成り、空も明るく成ったので降下準備を指示。斜面にとり付いて居るよりは降下してしまった方が実は安全だったりします、そんな緊張感溢れる場面なのに初の高所ラぺで緊張と楽しさがミックスされたのかU田川君の変な笑い声が渓谷に響き渡る。
おらぁあーっ開けろー、開国しろやあぁぁあ
そんな彼を憐憫に思いながらも無事降下し終えた事を確認、まずは一安心。しかし雨はやまず…どうするか。新人のK田君には雨天の中での滑り易い状況で高所ラぺをさせる訳にも行かず待機を指示、問題はワタクシ。
うん、やっぱり行きたい。自分の目で確かめたい。
U田川君が涸れ滝を登ってきたので2人はココで休憩していてくれと伝え、左壁のロープフィクスポイントまで行く事を決意。雨で滑り易いけれど慎重に行けばまあ何とか成るでしょ、それではちょっと行ってきます。
左岸に入って直ぐ、直登して3メートルでトラバース出来る場所を発見。少し進むと予想通り旧作業道が顔を見せた、しかしこの作業道はグイグイと高度を上げて自分の行きたい方向とは掛離れたルートを取る様だ(※5)。早々に離脱して道なき斜面をトラバース、そしてやっとこさでフィクスポイントへ。
急斜面からアプローチ、高度は約30メートル。そこから慎重に5メートル程下るとロープのフィクスポイント、またココが非常にやっかいな地形で身動きが取り辛い。樹木を跨いでセーフティを再度設置、降下準備に入る。
下方に見えているのは10メートルの涸れ滝上部でK田君。カメラを構えて準備していた、そうか…彼まで直線距離的にして40メートル位、高低差では20メートル(崖下30メートル)も在る計算だ。
※5:今後追加エントリーで今回の地形調査の内容をまとめる予定です、色々と面白い事が判明しました。
底が見えない狭いゴルジュに吸い込まれる様に降下していく、本人は最高に楽しいひと時。
帰るやで。
雨は止んで空は明るく成っては来たけど渓谷には霧が立ち込めて気温もぐっと下がって来た、息が白い。入渓して5時間以上が経過して体力的にもそろそろってな具合なので撤収準備に入ります、新人2人がロープ回収班として尽力。おっちゃんはもうシニタイやで、早よ帰ってビール呑みたいっちゅーねん。
それでは帰ると致しましょうか、色々と収穫が在ったので山行としても調査としても大満足の1日でした。K田君には少々物足りない内容だったかもしれないけれど次回はシッカリとロープワークを勉強して貰ってもっと素敵なロケーションへお誘い致しましょう、頑張ってや。
ああ、つかれたー。
詳細は今後追加エントリーとしてまとめるとして今回の現地再調査で判明した事を机上調査と共に少しだけお伝えして終わるとしましょうか。
本村川源流帯
元々は鹿野山を水源にもつ細いながらも流れの強い川だった、それは現在の涸れ沢をみると非常に良く解る。左右にブレずに急激な高低差を大小様々な滝を擁して飛清川支流に流れ込んでいた、最終的には湊川に合流して東京湾に至る。しかし現在では県道93号線を敷く為に寸断、また水源付近の開発も相まって源流は消失。その後流れ込みも無くなり、1950年代には完全に枯渇、後に上流から見て左岸側(東側)のゴルフ場建設(鹿野山ゴルフ倶楽部)造成の為に植林。この植林により涸れ沢に流れ込む自然の雨水も激減、結果泥岩質の壁が砂壁状態まで干上がり1960年代以降現在の状態と成った様だ。
因みに造成時に使用された旧作業道(今回も少しだけ歩いた)は植林用ではない、それ以前に製炭用の窯が2つ程在ったと現地の方からお聞きしている(見付ける事は出来なかったけれど)。植林時はその作業道を利用した事に成るが現在それとも違う獣道が2本程発見出来た、その内の1本は行政と測量業者の作業道だと判明。踏み跡は浅いけれど確かに新しいと判断出来ていたのでこれは納得。しかし残る1本は…(これは追加エントリーで近々ご紹介しましょう)。
西側には3本の旧道(内1本は今でも詳細地図に描かれています)、1本は1940年代から1960年代に今とは違う土地所有者が農耕地として開拓してその作業道として利用されていた。また違う1本は墓地へのアクセス道として主に鹿野山地区から延びていた(田倉地区かも古い山道を利用してアクセス可能だったとする情報も在り)、そして最後の1本は田倉地区との商業道だ。これは残念ながら近代交通事情の開発に飲み込まれてしまい現在はその道筋を辿る事は不可能に近い、周辺の開発と共に埋もれてしまった地域史はなかなかと興味深く、これも合わせて何れシッカリとまとめてご紹介しようと思う。
先ずはこの本村川源流帯の調査は終了、あとは個人的に色々と攻めたいルートを開発する事に成るだろう。因みに行こうとと思えばこの源流帯から山間部だけを経由して新人教育でよく利用する恩田川水系の間滝に行く事も可能だ、まあとても辛い行程では在るけれど。
今後もちょくちょくと遊びに行く場所なのでその過程で新しい発見が在ったら追記する予定です、それと長時間のカッチンは心と身体を蝕みますのでご注意下さい。本日は以上と成ります。
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