千葉県│田代滝
滅びの美学 [ 廃墟・廃屋・遺跡・廃村・廃道 ] 探索 - 夷隅川水系西畑川 田代滝
自然豊かな房総を擁する千葉県、県内独自の農業用水確保工事技術「川廻し」などが盛んな事で解る通り河川が入り乱れておりまして。そして開発を免れた地域では、大小様々な滝が今でも薄くも確かな水幕を空き上げ続けているのです。
県内の沢をそりゃあもうアレする程歩いたお陰で随分と素晴らしい滝に出会ってきたのだけど、今回はそのロケーションの美しさからカメラ好きや沢屋さんに人気のある滝をご紹介したいと思う。有名な滝なのに訪問したのは最近(2012年)でその際に一目惚れ、
「ああ、ココでシャワーラペしたいなぁ」
と。最初の調査訪問から4ヶ月、盛緑の田代滝へ簡易装備を持って行って来たですよ。
この田代滝、房総半島では数多く点在する「川廻し」で作られた人口滝。バイパスによってショートカットされた高低差約10メートルの低い滝だけれど周囲が崖で囲まれる様に存在しているので迫力は結構ある、難易度は低いのでラペ初心者でも十分楽しめるのも魅力だ。じゃ早速レポートの開始といきましょう。
この滝へのアクセスは2ルート、滝上部から沢もしくは左岸のブッシュを掻き分けて滝上部へ出るルートと回り込んで短距離の山間部を歩き、滝壺30メートル下流へ出るルート。今回はラペが目的だったので上部からのルートを選択、3月に訪問した時は気に成らなかった獣道が7月後半の真夏では深いブッシュに覆われていた。
カメラの同行撮影者から沢屋の同行者へとジョブチェンジした弟子♀(2●歳)を連れて藪漕ぎ開始。
「おい、このロープ持て」
「え~あたしぃ自分の過去より重いモノ持てないですよぉ」
すげぇ竹薮だな竹しょー
左岸のブッシュを抜け、沢を少し歩くと緩やかなカーブの先に田代滝が姿を現した。先にロープを垂らし、バイトポイントやステップポイントを確認する。水流は中央の大きくハングしている場所を隔て左右に流れ落ちている、今回は着地、着水両方が簡単な左側の落ち込みを選択した。
高さが10メートルとはいえ、初心者には怖い高さの筈だ。
10メートルと言ってもこれだけの高さが在る、実際上部から見ると怖い筈だ。
滝上部で緊張を解すかの様にウンコ座りをし、十分なリラックスから欠伸までしてしまう用意周到さ。心の準備に余念が無い素晴らしいコンディションセットアップ。弟子よ、準備は万端だな?
「…。」
てんてんてんじゃねぇよ。
いい加減蹴り落とそうかと思ったら滑って勝手に落ちる程のやる気溢れる弟子にビレイを確保してラペの基本講習を始める、朝まで降り続いた雨の所為で水量が多いが大きな影響は無いようだ。滝中央のインターバルポイントまでアシストすると上手く着地する事が出来た、これなら1人でも降りれそうだな。
インターバルからの復帰、1人で登り始めた。最初は引き上げようかと思ってたけど以外と根性が在る様だ、この分なら次回は20メートルクラスの滝にでも連れて行けそう。
セーフティロープを使えば一人で昇降が出来る様に成るまで1時間も掛からなかった、なんだ以外と才能あるんじゃねぇか。ハングが出来れば着地や着水も直ぐに覚えられるだろう、単独ラペ傾斜70度以上で上手くブレーキが出来れば一先ず初心者からは脱却だな。
「おーい、楽しいかー?」
「(面倒くせぇ」
!!!…こいつ直接脳な…じゃねぇ、今クチに出したろテメェ。
お先に滝壺を迂回して弟子の様子を下から伺う、石ころや木片と共に心に突き刺さる罵詈雑言を投げつける。直下は滝壺の為、1/3の辺りで右側に迂回、傾斜の殆どないナメ岩の上を右側へ。この滝のシャワーラペのルートとしてはこれが順当だと思う、しかし本当に美しいな田代滝さんは。
滝壺以降の川の流れは実に穏やかだ、ただ沢歩きとしては少々面倒な程に川底が安定していない。突然50センチクラスのポットホールが在ったり複数の岩質が混在しているので油断していると直ぐに転んでしまう。
人には厳しくとも川やその周辺には沢山の野生生物が生活しておりまして。訪問当日(7月後半)はハグロトンボやニホンカワトンボ(7月としては時期的にギリギリだけれど寒い日が続いたので見れた様だ)、イモリ、ヤモリ、サワガニ、沢山の稚魚(早くて魚種を確認出来なかったです)が見れました。
いやぁ楽しかったです、田代滝。見る為だけでも訪問する価値がある物件だけれど山好きはどうしても登ったり降りたりしたくなっちゃうんだよなぁ、そんな心揺さぶられる滝が房総には幾つか在ります。
最後に田代滝に関するお話を幾つか、まずはウィキペディアさんに伺ってみましょうか。
田代滝 - ウェキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%e7%94%b0%e4%bb%a3%e6%bb%9d
この説明文で出て来る大蛇伝説、その物語は以下より抜粋して掲載しよう。
田代滝の機織り娘
http://www5b.biglobe.ne.jp/~hashi_m/tasirotaki_dennsetu_minnwa.htm
田代滝(たしろだき)の機織り娘(はたおりむすめ)
むかしむかしのことだ。 西畑(にしはた)の田代(たしろ)に、与作(よさく)という腕(うで)のいい木こりが住んでいた。ある日、田代滝で木を伐(き)っていると、手を滑(すべ)らせて斧(おの)を滝壷(たきつぼ)に落としてしまった。与作は裸(はだか)になると滝壷に飛び込んだ。 あちこちさがしていると、機織り(はたおり)をしている娘が目の前にあらわれた。斧は機織り機(はたおりき)のそばに落ちていた。娘に返してくれというと 「わたしのことをだれにも話さないと約束してくださるなら、返しましょう。」というではありませんか。 「わかった。だれにも話さない。」というと、斧と一緒に錦(にしき)の反物(たんもの)と竹串(たけぐし)に刺(さ)した魚をたくさんくれた。 娘はこの世の者とは思われないほど美しかった。家に帰ってみると、反物は川藻(かわも)で、魚は笹(ささ)の葉(は)であった。翌日、与作はまた田代滝に行った。そして、わざと斧を滝壷に落とすと、昨日と同じように滝壷にもぐった。目の前にあらわれた娘は「また、おいでくださると思っていました」 とほほ笑(え)みながらいった。与作は天(てん)にも昇(のぼ)る思いであった。
それからというもの与作は毎日毎日、田代滝に行って娘と逢(あ)った。 ところが与作はげっそりやせてきた。光明寺の和尚(おしょう)が与作の人相(にんそう)を見ると、死相(しそう)があらわれているではないか。 和尚が話を聞くと、与作は田代滝での不思議(ふしぎ)な話を語った。「あの滝壷の主は白い大蛇(だいじゃ)だ。おまえさんは白い大蛇に精気(せいき)をとられている。このままだと死んでしまう」と和尚が言った。与作はびっくりした。「し、し、死ぬ。どうしたらいいのでしょうか」「お経(きょう)を唱(とな)えるしかあるまい」 翌日、与作と和尚は滝壷に行った。与作を滝壷のそばに座らせお経を唱えた。すると与作は何者かにあやつられるように滝壷に入り始めた。 水の中からは美しい娘があらわれ手招きした。その瞬間、和尚は「喝(かつ)」と叫んだ。すると、娘は白い大蛇に変わって滝壷を泳ぎ回っているではないか。「見たか。あれが娘の正体だ」(うそだ。あの娘が大蛇なんてうそだ)与作は心で叫んだ。
与作は翌日また滝壷に行った。すると滝壷の水面が波立ち白い大蛇があらわれた。大蛇は与作に巻きつくと滝壷深く沈んだ。そっと付いてきた和尚がお経を唱え続けると、与作は半死状態で浮き上がってきた。滝壷には蛇の鱗がたくさん浮かび、キラキラ輝いていたとさ。
おしまい
(斉藤弥四郎 ふるさと民話さんぽ「広報おおたきNo.430」より)
アプローチ
国道465号線といすみ鉄道が併走する区間に在る上総中野駅、その中野駅近くから県道177号線が延びる。暫く走ると田代の集落が見えてくる、集落最後の商店「田辺商店」を目印にデポ地点を設定して滝上部からのアクセスか下部のアクセスかをお好みで。滝までの細かな徒歩ルートは各々調べて欲しい。
地図リンク
https://goo.gl/maps/rgu9EP9JPF32
写真撮影:6Frogs Design Works
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